愛の唄 7

チクタクと規則正しく動く時計の秒針の音がやけに響く静かな部屋の中、抱きしめられたまま肇はどうしたらいいのか分からずただ戸惑う。
背に伝わる手の温もり、押し付けた胸から聞こえる規則正しい心音に混じり、やけに響いてくるのは自分の心音だった。
聞こえたらどうしよう、そんな思いが頭の中を巡るのだけど、肇をしっかり抱きしめたままの識はその腕を離そうとはしてくれなかった。
「・・・・・識・・・・・?」
「気づこうよ、鈍感にも程があるだろ?」
抱きしめる腕を更に強くする識の呟きに肇は更に速さを増す自分の鼓動を聞きながら、何も口に出来ないままただ胸元へと強く顔を押し付ける。
「・・・・・・好きだよ」
耳元へと囁く様に告げてくる、いつにもまして甘く低い声に肇はただ頷くとその背へとそっと手を回した。
認められなかった燻る気持ちと同じ思いを抱いてくれていた識に伝えられる上手い言葉が見つからないまませめて同じ気持ちなんだと気づいてもらう為に肇は回した手に力をこめる。
暫くずっと互いの鼓動を聞きながら黙って抱き合っていた腕を緩めたのは識が先だった。
「・・・・・飯でも食う?・・・・・お腹、空いただろう?」
回していた腕を名残惜しそうにゆっくり、と放しながらも問いかけてくる識に肇は彼の顔を見上げ、まだしがみついていた手を放す。
「・・・・・ごめん、僕・・・・・帰る!!」
そのまま立ち上がると服を探して辺りを見回す肇を識は驚いた顔で手を伸ばした。
「ごはん、食べてけよ・・・・・今日は休みだし、何か都合悪いのか?」
「・・・・・いい、本当にごめん、帰りたい。」
頭を振り強固に断る肇を識は再度腕を引き寄せると胸の中に抱き込んだ。

「・・・・・・識、あの・・・・・離して・・・・・」
「嫌だよ、離したら帰ろうとするじゃん。・・・・・もう少しこのままでいてよ。」
立ったまま背後からぎゅっと更に力を込められ肇は身動きとれないまま固まる。
顔中といわず全身が識の体温を感じ一度も二度も熱が上がった気がする。
ばくばくと高鳴る鼓動が聞かれたら言い訳すら聞かない、そんな中首筋にちりっと痛みが走る。
「・・・・・識?」
「ねぇ、俺の事好き?・・・・・・それとも・・・・・」
びくり、と身を疎めながら問いかける肇の声に被さるように識は問いかける、その度に首筋に直に当たる唇から零れる息が肌を撫で、更に体の熱が上がる気がする。
熱に浮かされくらくらとしてくる頭で、今にも崩れそうな体を両足に力を込め直し必死に支えながら肇は微かな息を吐く。
「肇?」
「・・・・・好き、だよ・・・・・たぶん、同じ意味で・・・・・だから、何か、その・・・・・」
ぼそぼそ、と小さな声で呟くその声を識はちゃんと聞き取り更に強く肇を抱きしめてくる。
唇を首筋へとゆっくりと押し付けてきた識にびくり、と反応する肇をしっかり抑えたままちりちり、と長引く痛みを送る。
「・・・・・ッや・・・・識・・・・・」
「離さないよ、もう二度と離してあげない。」
耳元へと呟きながら舌を這わせる識に肇はびくびくと何度も体を震わせる。
そんな肇の頬を優しく撫でながらも識は背後から顔を近づけると軽く小さなキスを肇の唇へとそっと落とした。
「・・・・・・し、き・・・・・・」
戸惑う様な視線を向け呟く肇を識はやっと腕を離し開放してくれる。
途端に力なくその場にへなへなと座りこむ肇の前に回りこむと識は顔を近づけてくる。
間近まで迫った顔に肇はそっと瞳を閉じた。


*****


何度も啄むようにちゅっちゅっと音が出るキスを繰り返される。
それが段々と深くなり、息苦しさについ口を開いた肇はぬるりとした舌の侵入に体をびくりと震わせ口を硬く閉じると手を伸ばし少しでも後ずさろうとする。そんな肇の肩をしっかりと抑え逃げ出さないようにした識は何度もキスを繰り返し再度舌を押し込める。
「・・・・・・・んんっ、んっ・・・・・・」
ぬるぬるとした熱い舌が好き勝手に口の中を動き回るその感覚に慣れない肇は息苦しさに鼻を鳴らし呻く。
逃げ惑う舌を絡めとられ熱が舌を通して更に上がるそんな気がしながら肇は識の服の端をぎゅっと握り締める。
口の中で飲み込み切れない程溢れだす唾液が自分のなのか識のものなのかも分からない程いっぱいになる。
口の端から、だらだらと零れ落ちる唾液も口を離した識が舐めとりながら何度も唇をおしつけてくる。
酸欠でくらくらする頭をそっと抱きかかえながら、識が床へと肇をゆっくりと横にする。
当然キスしながらで、唇の端から拭ってもだらだら流れる唾液もそのまま頬を伝い床へと零れ落ちる。
唇を開放されはぁはぁと乱れた息を吐く肇を見下ろし笑みを浮かべた識はそっと頬へと手を伸ばした。
「・・・・・ねぇ、このまま俺のモノにしていい?」
耳元へと唇を近づけ囁いてくる言葉に肇はそっと目を開いた。
赤くなった目元を更に赤くしながらも見上げてきた肇は何も言わずにただこくり、と頷くから識はますます笑みを深くする。

流石に初めてで床は痛いだろうから横にしといてなんだけど、と肇の身を抱き起こし、識は手を引くと寝室へと連れて行く。ベッドへと押し倒されながらまたキスを始める識と目が合い肇はそっと瞳を閉じる。
また何度もキスをされながら、今度は唇だけじゃなくて首筋や胸元へもキスをされる。
服を脱がす手つきが手馴れていてそんな所に肇は何かもやもやしたものを感じながらも、段々と熱くなる体にそんな些細な事を気にする余裕すらなくなった。
「・・・・・っあ・・・識っ・・・・・やっ・・・・・め、だめっ・・・・・」
「大丈夫だから、ねぇ・・・・・肇、任せて・・・・・・」
胸の粒を舐められ、指先で捏ねられるのは何とか我慢もできたのに、識は更に下へと顔を動かす。
濃厚なキスに反応した熱い体をなまなましく現したたった一つ存在を主張し始めたそこへと口をつけてくるから、肇は目を開くと下へと沈む頭へと手を伸ばした。
髪の毛を引かれ顔を上げた識は笑みを浮かべると更に深く銜え込んでくる。
温もりに包まれ、緩む指先でそれでも頭へと手を伸ばした肇だけれど、銜えるだけじゃなく、ぬるぬるとしたもので撫でられびくり、と体を震わせる。
半分だけ自己主張を始めていたそれが識の口の中でぐんぐんと育っていくのを感じる。
先を舌で何度も撫でられ、口を窄め動かしてくる識に肇は枕に頭を押し付け唇を噛み締め更にその上から手で押さえる。思ってもいない声が出そうでもう自分の事で精一杯だった。
ぬめる感触、耳に響いてくる水音が更に肇の体を熱くさせ、自慰などではとても味わえない不思議な感覚に肇はもう自分の欲望が堪えきれない程膨らみ熱を持っているのを感じる。
「・・・・・・もう、やっ・・・・し、き・・・・・駄目っ!!」
泣きそうな声で叫ぶ肇の声に識が更に口を窄め促すのと同時に白濁の液が溢れだす。
こくり、と喉を鳴らす音が続き、綺麗に舐めとると顔を上げる識に肇は目元を潤ませたまま見上げる。

「・・・・・吐き出そうよ・・・・・」
「嫌、もったいない。ご馳走様でした。」
笑みを浮かべたまま頭を下げてくる識に肇は更に顔を赤く染め俯く。
濡れて赤く染まった唇に妙に視線が動き居た堪れなかった。
「・・・・・肇、続き・・・・・平気?」
気にせずに問いかけてくる呑気な声に肇は曖昧に頷く。
それから少し考えた肇は真っ赤な顔を上げると識をもう一度見上げる。
「僕も、口でする?」
素朴な問いかけに一瞬笑みを引き攣らせた識は咳払いをすると顔を近づけてくる。
「口は今度でいいよ。・・・・・・俺のモノにするって言ったよね?・・・・・意味わかってる?」
耳元へと呟く識に肇は真面目な顔で識を見上げる。
そんな肇の耳元で識はひっそり、と囁きながらあらぬ場所へと手を伸ばしてきた。
「・・・・・ムリ! 無理だから、僕も口でする・・・・・・触りっこでもいいし・・・・・」
腰を引きながら逃げようと身動きする肇の声に識は腕を引き寄せ、元いた位置に肇を戻しながら「平気だよ」と答えながらもがさがさと自分のズボンを脱ぎ始める。
「・・・・・・識!!」
「大丈夫だから、最初は痛いかもだけど、俺は頑張るし肇も頑張れ。・・・・・ねぇ?」
笑みを浮かべ呟く声に肇は泣きそうな顔で識を見上げるからそのまま唇へとキスをそっと落とした。


*****


頑張ろうよ、その言葉通りに識は肇が泣いても喚いても暴れても止めようとしてくれなかった。
両足を大きく開かれ、くちゅくちゅと唾液を絡めた舌とやっぱり濡らした指で何度も解し、硬く閉じる蕾をゆっくりと押し開いてくる。異物が入り込むそれだけで痛みがぴりぴりと走り肇は自分の指を噛み締める。
何度も行き来する指が増える頃、肇は荒く苦しそうな息を吐いた。
「・・・・・まだ、痛いかも、だけど・・・・・ごめん、挿れるよ・・・・」
息吐いてと耳元に呟くから肇は体内の空気を押し出すように息を吐く。
同時にぬるり、とした温もりが潜りこんできて肇はそのまま息を止めて識を見上げる。
額に浮かぶ汗が厚いカーテンの隙間から差し込んでくる日の光できらきらと輝くのを目にして肇は朝から自分達は何をしているのだろう、と突然思う。
一瞬別の事を考えていたからなのか、中に潜りこんできた識の欲望がほとんど埋まってから肇は我に返る。
「・・・・・平気?」
「・・・・・うん・・・・・」
違和感は拭えないけど、識と深く繋がっている自分に不思議な気持ちが湧きだしてくる。
「肇?」
馴染むのを待つかの様にじっとしている識の声に肇は顔を上げると言葉に出来ないその感覚を伝えたくて笑みを浮かべる。そんな肇に少しだけ顔を近づけるとそっと唇を触れ合わせる識に肇は手を伸ばした。
びくり、と中で蠢くそれに体中の熱が更に上がる気がしながら、肇は識の首筋へと腕を回しそっと抱きついた。

ゆっくり、と肇を気づかいながらも動き出す識に縋りついたまま中で更に熱を持ち大きく膨れ上がる欲望を感じる。
「・・・んん・・・・・んあっ・・・・・・あん・・・・っん、んあっ・・・・・」
深く奥を突かれ、緩やかに中で掻き回され必死に閉じていた唇へと何度もキスを落とされ肇は堪え切れない様に鼻を鳴らし微かに声を零す。
互いの漏らす息遣いと、聞こえてくる繋がっている場所からの音が段々と濡れてくるそれだけが部屋を支配する。
奥を突かれる度に先走りの液が擦りつけられるようで肇は息を吐く。
一度、識の口の中で達したものが互いの間に挟まれ刺激され勢いを取り戻してくる。
先からぼたぼたと零れ落ちる白濁の液が肇の腹を汚す。
そんな事にも構えないくらいに、最初は労わりながら戸惑いながらの行為だったのに、今では一度突くそれだけで、速さが増してくる。腰を抑え、奥までがんがんと打ちつけられるけれど、それでも肇は汗で濡れた背へと必死で縋りつく。
唇へのキスを繰り返し、舌を絡め合い、零れる唾液も取り合わずにただひたすら先へと続く。
言葉もなくただ互いの腕を絡め合い、上から下まで繋げられる所を全て埋め尽くす。
何も考える事ができないまま肇は更に深く奥を抉られる様に突かれ吐き出される熱い飛沫を識へと縋りついたまま受け入れる。頭の奥で何かが弾けるみたいな感じがした後、肇の意識は薄れていった。


純愛路線だったのに、書くのは楽しかったですが;
展開早過ぎというかすいません、識さん手が早すぎ(笑)

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