眩しい日の光に少しだけ眉を顰めると薫は右手をじっとみつめる。 「浮かない顔だけど、ちゃんと寝た?」 背後からのいきなりの問いかけに顔を向けた薫は視界に入った不機嫌そうな友人、飯野佐智へと何も答えずただ苦笑を向ける。 「聞いたよ、広海から・・・キレたって・・・」 「・・・何か、冷静に話しとか出来なくて、さ。・・・・うちの真紀に触れたやつだと思ったら・・」 苦笑を浮かべたままぽつりと呟く薫に佐智は呆れた様に肩を竦める。 「なら、今更後悔するなよ。お前の最善はソレしか無かったんだろ?」 「・・・そう、なのかな?」 「ぼくに聞くなよ。」 戸惑い呟く薫に佐智は溜息を零し呟いた。 「話、変わるけど・・・ぼくお腹空いたんだけどさ、何か無いの?」 「・・・ああ、こっち。」 もう一度右手を見つめ直す薫に内心溜息を漏らしながらも問いかける佐智に一瞬目を見開く。 そうして苦笑を浮かべると薫は消えない気まずさを拳を握り締め振り切ると先に立って歩きだした。 眠気覚ましの様なたっぷり濃い目のコーヒーを自分に牛乳と簡単なフレンチトーストを佐智へと手早く用意した薫は佐智の目の前にトーストを置くと自分も席に着きコーヒーを口に含む。 「で、解決はしたの?」 「・・・ああ。多分、これで手出しもされないと思うし、あいつも懲りたと思う。」 「曖昧だね。・・・人と人の関わり合いなんて他人は更に分かんないけど、あいつ・・・歪んでるよね?」 「・・・どっち?」 「門倉かな?・・・でもどっちもかも。城戸も・・・結構歪んでるよね?」 「どうだろ。俺には分かんないよ。」 佐智の問いかけに頭を振り否定しながらも薫は大事な幼馴染の為なら何をしても厭わない男の顔と無いものねだりばかりを要求する子供の様な男を思い出す。 軽く眉を顰める薫に佐智はあえて何も聞かずにトーストを黙々と食べだした。 「・・・おはよう、ございます・・・」 眠そうな声でそれでもしっかり挨拶しながら入ってきた真紀に薫は立ち上がる。 いそいそと近くに寄ると少しだけ顔色の優れない真紀の耳元へとひっそりと問いかけている。 問いかけに笑みを浮かべ頭を振る真紀の頭を撫でる薫ははたから見ると兄弟というより年下の恋人に甘い彼氏に見え佐智は視線を逸らすと食べかけのトーストへと目を向ける。 軟派でいい加減な印象の強かった友人がああも変わるのかと内心溜息を漏らしながら。 「おはようございます。・・・昨夜はすいませんでした。」 席に着き佐智へと頭を下げてくる真紀に薫が「気にするな」と背後から声をかけているのに気づいたけれど佐智は何も言わずに笑みを返した。 顔を赤く染める真紀の背後から薫が睨んでも佐智は笑みを崩さないまま口を開く。 「おはよう、真紀君。・・こちらこそ、あまりお役に立てなくてごめんね。」 「・・・そんな事。いてくれるだけで・・・何か安心しました。」 佐智の言葉を否定して真紀は笑みを浮かべ話す。 本当に可愛いと思いながらも背後の薫が機嫌が悪くなりそうなのを上目使いで確認しながら佐智は何も言わずに内心苦笑を浮かべる。 それから広海がだいぶ遅れて起きてきたのだが、薫は不機嫌そうにテレビを見ていてその脇では和やかな雰囲気で仲良く話し込んでいた佐智と真紀がいた。 部屋の空気は微妙で広海は起きてきた自分のタイミングを内心後悔していた。 広海と佐智が帰るその時まで薫は不機嫌なままだった。 ******************** 「薫さん?!」 「・・・やっと二人きりだよ、真紀!飯野と何、仲良くなってんだよ!」 「・・それは、薫さんの友達だから・・・」 ソファーの上、真紀に抱きつくと薫は文句を何度も繰り返す。 困った様に言い訳する真紀に薫はそれでもぶつぶつ呟くけれどお腹に顔を埋めていて良く言葉が聞き取れずに真紀は苦笑を浮かべると薫の頭を撫でる。 「・・・真紀?」 「俺には、薫さんだけだよ・・・信じてくれる?」 顔を上げる薫に真紀は両手を顔に伸ばしそっと触れると真剣な顔で問いかける。 何も答えずにただ照れたような笑みを浮かべた薫に真紀も笑みを返した。 「・・・有紀、城戸有紀・・・そいつが元凶で全ての始まり。告白されたけど重そうだったから断った・・・それがきっかけだった。」 向き合ったままずるずると下へと落ちたまま下腹部へと顔を寄せるとぽつり、と呟いた薫に真紀は再度頭へと触れだした手を止める。 「薫さん?」 「知ってるだろうけど、真紀を手に入れるまで俺は結構、いやかなり来るモノ拒まずで遊んでたよ。そんな時の告白だったけど、俺の中で何かが違うと思ってた。」 真剣な顔で告白してきた有紀を見守る様な視線もあの日初めて感じた・・・それから何度断っても拒んでも付き纏う有紀と一緒に感じる視線が煩わしくて仕方無かったあの頃。 欲しいモノを手に入れられて大事なモノ以外何もいらなくて今までの全てを清算した薫にそれでも付き纏う有紀に連なる視線に薫は追い詰められてる気がしていた。 「それで?」 「・・・多分傷つけた。酷い言葉と態度だったけど、後悔だけはしてなかった。理想と現実の俺は違う、それで目が覚めてくれるならそれで良かったのに・・・ごめんな、結局一番守りたい人を俺が傷つけた。」 腰へと回してきた腕に力を込めてくる薫に真紀は笑みを浮かべ頭を振る。 「俺は薫さんが流されないで良かったよ。・・・ここに、俺の側にいてくれる薫さんで、大好きだよ。」 頭を撫でる手を止めると屈みこんだ真紀は顔を薫の頭へと摺り寄せながら呟く。 覆いかぶさる真紀を薫は身を起こそうとして離れさせると顔を見合わせ互いに笑みを浮かべて手を伸ばし自然に抱き合うと互いの温もりを感じた。 薫は胸元へと真紀を抱き込んだまま優しく頭を撫でながら溜息を零す。 「薫さん?」 「・・・欲しいモノを何をしても手に入れる、その考え方は嫌いじゃないよ。でも、いざ自分が標的にされると嫌なものだよね。」 真紀の問いかけに呟き薫は真紀の顔へと手を伸ばしてくる。 顔が近づいてくるから真紀はゆっくりと瞳を閉じる。 生暖かい息と温もりを唇に感じて真紀は薫の背へと回していた手に少しだけ力をこめる。 すぐに押し倒されて優しいキスは舌を絡めあう唾液を交歓しあう濃厚なキスへと変わる。 首筋を舐められ髪を握りしめる真紀に薫は笑みを浮かべたままもう一度顔を上げると唇へとキスをする。 「・・・ここで・・?」 「・・・ダメ?・・・俺は欲しいんだけど、ベッドに行く?」 そこまで持たないとシャツの下へともう手を伸ばしながら問いかける薫に真紀は唇を噛み締める。 「真紀?」 「・・・早く、早くして・・・ここでいい、から・・・」 乳首を指先で摘み、捻り、擦りながら問う薫に真紀は耐えきれずに呟く。 もう止める気が無いと分かっているのに体が火照ってきているのは真紀も一緒だから両手を薫へと伸ばし答えた真紀に薫は笑みを浮かべ、ベルトへと手を伸ばした。 「・・うっ・・・んっ・・・ああっ、そこ・・・」 「・・・ダメ?・・・ここは、良いってよ?」 下腹部へと顔を埋めた薫の声に真紀はびくり、と体を揺らす。 薫が話すそれだけで、敏感な真紀の大事なものに息がかかる。 露出した肌を擦る薫の髪も息さえも真紀をただ煽る。 肌へと触れる指先が秘所へと伸ばされるから真紀はそっと息を噛み殺す。 油断するとあられも無い声が飛び出しそうで「我慢するな」と言われるとますます我慢したくなるのが人って生き物だと思う。 理性を保っている内は、ぐちゃぐちゃに溶かされるその時まではなるべく声も抑えたい。 気づけば堪えきれない程漏らしているあの声が自分が出していると真紀はあまり思い出したくなくて唇を噛み締める。 「薫、さん・・・ダメ・・・っあ・・」 奥へと入り込む異物がまだ指だと分かる位にはまだ真紀に理性は残ってる。 だけど入り込む指の本数や、何がどうなっているのかはやっぱり考えたくない。 身を起こし顔を近づけてくる薫に気づき真紀は腕を伸ばす。 抱きしめてくれる温もりがいつからか離せなくなったのをいつから?なんてもう思い出せない。 もう二度と離せない思うのはそれだけ。 ぎちぎちの堅い秘孔を熱い塊で開かれるその時はまだ慣れない。 体の内側に他人が入り込む、自分と違う鼓動を直に感じる、温もりに抱きしめられもう何度も教え込まれたその先の快楽へと向かう道のりを感じたいのはただ一人だけだと、そんな思いをこめて薫へと真紀は抱きついた。 同じだけの力で抱きしめてくれる温もりに真紀は笑みを浮かべる。 ******************** 「キスして」 甘える声に優しくキスを送る薫に真紀は満足そうに笑みを返す。 結局ソファーの上で抱き合いバスルームで汚れを洗い流しながら再加熱した熱に煽られそのままのぼせた真紀は赤い顔でベッドの上、薫へと顔を向ける。 「どうするんだよ、薫さんのせいで、俺・・・どんどん壊れてく気がする・・・」 ベッドの上起き上がれないと散々呻いた後ぽつんと呟く真紀に薫は笑みを返す。 「・・・良いじゃん。」 「あのね、俺はただ親がいなくなってから爛れた生活を始めた兄と普通に仲良くなりたかっただけなのに・・・」 「ご不満ですか?」 顔を寄せて問いかける薫に真紀は視線を逸らす。 でもその顔はますます赤くなって薫は笑い出す。 「好きだよ、真紀。大切にするから。」 「・・・ずっと?」 「とりあえず、真紀に俺と同じ意味で触れる奴は排除していくかな?」 真面目に返す薫に真紀も笑い出す。 そうして腕を伸ばすと薫へと真紀は抱きついてくる。 頭を撫でてくれる感触が好きでこんなに大切だと思える自分をやっぱりどこかで不思議に思う。 うとうとと眠りかける真紀に薫はそっとしがみつく腕を離すと頭をもう一度軽く撫でると部屋を出る。 チャイムの音とドアの開く音で真紀は薄っすらと瞳を開き、眠ってた自分に一人苦笑を零すと起き上がる。 窓の外はまだ明るくて眠ってたのはそう長くないと判断しながらドアに手をかけて立ち止まる。 チャイムの音もドアの開く音も夢では無いのかとそっと部屋のドアを開き階下へと視線を向ける。 「・・・だから、謝らせて欲しい。酷い事だと反省もしているから・・・」 「嫌だ。俺が言っとくからもう帰れよ。・・・何度言っても会わせる気はないから。」 うんざりと呟く薫に尚も食い下がる声、だけど何度か話してとうとう出て行く音がしたから真紀は部屋から出ると階下へと改めて視線を向ける。 「薫さん、誰かいたの?」 「真紀!・・・起きたのか?」 上からの声に薫が顔を上げ笑みを浮かべるから真紀は階下へと足を向ける。 「え?・・・門倉って・・あの?」 「ああ。謝りたいって会う?」 問いかける薫に驚きながらも真紀はぶんぶんと頭を振る。 「だから断っといた。・・・あいつも謝るぐらいならなんで手を出すかな・・・」 重い溜息を零した薫に笑みを浮かべると真紀はその肩口へと頭を乗せる。 「真紀?」 「薫さん、好きだよ。・・・まだ会いたくないけどそれで向こうの気が済むならその内会うからそれまでは断っといてね。」 笑みを浮かべたまま答える真紀に薫は頭を撫でる。 きっと学校に行けばあいつらとも会うかも知れないとぼんやり思い出したけれど、真紀は頭を薫に押し付けると瞳を閉じる。 そっと触れてくる温もりに真紀は手を伸ばし抱きついた。 |
すいません。もう少し続きます。すっきりしたいのが色々あるのでもう少しだけ・・やばい終わりませんでした。