空いっぱいに祈る恋 15

雷鳴轟く中、無様に汚い手の内、好き勝手にされた体を抱きしめた、そこで真紀は重い瞼を押し開く。

窓の外はまだ明るい気がして時計が見たいと起き上がろうとした真紀は体に走る痛みにベッドへと逆戻りすると眉を顰める。
されてる事は同じなのに扱いが全く違うと改めて気づかされたあの夢に迄見た忌まわしい行為を思い出し唇を噛み締め枕へと顔を埋める。
「気をつけろ。」と何度も言われていたのに、朝だからと油断した結果がこれでは、もう笑うしかなかった。
今度はゆっくり起き上がると真紀はお風呂に入らないとと思い立ち立ち上がったその時遠慮がちなノックの音にドアへと顔を向ける。
「・・・薫さん?」
呟いた真紀の前でドアが開き、入ってきた薫は立っている真紀に目を向ける。
「真紀?・・・寝てろって言ったのに・・どうした?」
「・・・お風呂入りたい・・・」
泣きそうに顔を歪め答える真紀に薫は近づくと抱き寄せる。
「・・・薫、さん?」
「大丈夫だから、熱下がってからにしろ。・・・ほら、横に・・・」
「・・・ごめんなさい・・・ごめん・・」
胸元へと顔を押し付け謝りながらやっぱり泣き出した真紀の背を撫でながらベッドへと真紀を促す。
座り込む真紀の隣りへと座り薫は真紀を抱き寄せる。
「気にするな、は無理だって分かってるけど・・・真紀は悪くないから・・・」
「・・・でも、おれが・・」
「悪くないよ。・・・触られて感じたとかだったら、ちょっと気分悪いけどそれは男の生理だし・・・仕方ないかと・・・」
「・・・良くなかった・・・ただ、気持ち悪くて、俺は・・・」
「余計に早く熱が下がるために寝とけ。・・・抱き合うんだろ、俺と?」
抱きしめたままの腕の中で耳を赤くする真紀に笑みを浮かべそのまま薫は真紀を横にさせる。
「早く、良くなって。悪夢は全部塗り替えてあげるから。」
頬へと軽くキスをしてくる薫に真紀は更に顔を赤くすると俯く。
そうしてから薫へと手を伸ばしてくる。
「・・・真紀?」
何も言わずに頬へと手を当てる真紀を薫は黙って見つめる。
「触れて・・・俺に・・・薫、さん・・・」
唇へと指を摺り寄せる真紀に薫は苦笑を漏らす。
「体、辛くないの?」
「・・・平気・・・薫さんなら・・・平気・・・」
顔を赤くしたまま真紀は薫の顔から手を離さずにそれでもはっきりと告げてくるから薫はそのまま顔を近づける。
舌を伸ばしてきた真紀に薫は一瞬躊躇うが真紀を抱き寄せベッドへと沈みこむ。
二人の重みでベッドがぎしり、と軋んだ音を出した。


********************


舌を絡めるキスを続けながらも片手だけで器用に服を脱がす薫の手際の良さに真紀は未だに慣れない。
自分は呼吸さえも満足にできない程キスに溺れ、ただ腕を掴み薫へと縋りつくだけで精一杯なのに、こんな時経験値の差を思い知らされる。
どれだけの人と薫が触れ合っていたのか想像して嫉妬しながらも、今は自分だけなのが誇らしく思える時でもある上手く言葉にできない感情が真紀の中を駆け巡る。
「・・・薫、さん・・好き・・・・」
耳元へと擦れた声で囁いてくる真紀に笑みを返し薫はぎゅっと抱きしめてくれる。
温もりにその鼓動や匂いに包まれたまま真紀は瞳を閉じる。
深く、もっと深く薫を全身で感じる為に。

「・・・っあ・・ああっ・・ふっ・・・んんっ・・・」
相変わらず行為の最中に声を出すのを堪える真紀に苦笑を漏らした薫はそっと目の前のぷるぷると震え先走りの液を零し始めたそれへと舌を這わせる。
「・・・あっ・・・やっ、そこは・・・薫、さん・・・」
びくり、と体を揺らし下半身へと顔を埋めている薫へと擦れた声で抗議する真紀に構わず舌の濡れた感触から生暖かい場所に包まれる感触へと変わり真紀は思わず唇を噛み締める。
「・・・っ!!」
声を押し殺してると余計に濡れた音が響くけれど真紀は唇を噛み締めたまま頭を振る。
油断したら出る喘ぎ声だけは真紀には耐えられない。
女のように抱かれてもまだ男のプライドが残っているからこそ、まだ理性が残っているうちは声を押し殺していたかった。
「・・・真紀・・・声、出そうよ・・・少しは楽になる・・・」
まだ真紀の股の間へと顔を埋めたままの薫の声に頭を振り拒絶する。
話す時にかかる息でびくびくと揺れる腰を固定し薫は秘孔へと指を伸ばす。
先走りの真紀のものから伝わる多少の液で少しだけ外側が濡れてるけれど、まだ中は堅く閉ざされてるのを知っているから慎重に触れてみる。
「・・・・だめっ・・っや・・・っ!」
薫の頭を掴み思わず声を出し制止してから真紀は口元へと手を当てる。
薫は身を起こし真紀へと顔を向ける。
唇が窓から差し込む光でてらてらと光り確かに濡れてるのを見て真紀は顔を赤く染め目を逸らす。
ぎしり、と鳴るベッドの音と耳元を掠める吐息に真紀は身じろぎ目を向ける。
「・・・薫、さん?」
「キスしよう・・・」
顔を寄せてくる薫に真紀は口元へと当てていた手を離し瞳を伏せる。
ねっとりと最初から絡んでくる舌を必死に受け入れ真紀は漏れる唾液も構わずに薫の首へと手を回し縋りつく。
真紀のものへとやんわりと今度は手を絡ませてくる薫に縋りついた真紀は夢中で唇を貪るキスを繰り返す薫を受け入れる。
「真紀に触れてるのは俺だよ。」
長いキスから開放され吐息を漏らす真紀へと薫は笑みを向け言う。
驚いた様に目を開いた真紀はそのまま気まずいのか目を伏せてくる。
「・・・真紀・・・」
「薫さんだって・・・分かってる、けど・・・」
「なら、俺が触れてるって覚えてて・・・三度目は絶対に無いから・・・」
額へとキスして呟く薫に真紀は泣きそうな顔で見上げる。
今度は軽くちゅっと音がするキスをされ真紀は縋りついた腕の力を緩める。
下肢へと伸ばした手を断続的に動かしたまま薫は真紀の胸元へと顔を近づける。
ぷっくりと尖った突起へと舌を絡ませ口へと含む薫の頭へと真紀は手を伸ばし、そろそろと撫でる。


********************


夕日が町を覆う頃、一端家へと帰り私服へと着替えた直毅は一件のドアの前で大きく深呼吸をするとチャイムへと手を伸ばした。
「直毅君、いらっしゃい。」
チャイムの音の後、間をあまり置かずに開かれたドアの前で笑みを浮かべる薫に直毅も笑みを返すと口を開く。
「・・・起きてますか?」
「うん。・・・中へどうぞ・・・リビングにいるから。」
スリッパを勧め先に歩き出した薫に直毅は今朝の様子が気になっていた身としては寝たままじゃない真紀にほっと胸を撫で下ろす。
薫に続いて入ったリビングでは今朝の顔色の悪い真紀では無く、血色も良くなっていて直毅は笑みを浮かべる。

「ご心配かけました。」
直毅の姿を見てソファーの上から頭を下げる真紀に直毅は近寄る。
「・・・もう、大丈夫なのか?」
「うん。・・・寝たらすっきりはしたよ。あの・・・学校は?」
「具合悪くて早退にしてるから、ばれてないよ。」
直毅の報告に真紀は安心したのか瞳を伏せると笑みを浮かべ、顔を上げる。
「真紀、夕飯は作ってあるから、直毅君と食べていいよ。」
「・・・薫さんは出かけるの?」
「ちょっと、ね。・・・直毅君、夕飯食べていってね。・・なるべく早く戻るから。」
お茶を運んできた薫の言葉に驚く真紀の頭を撫で直毅に頭を下げると、急いでいたのかそのまま薫はリビングを出て行く。
遠くで閉まるドアの後少ししてから聞こえる車のエンジン音に直毅は真紀へと顔を向ける。
「・・・平気?」
「・・大丈夫だけど・・・」
問いかける直毅に戸惑うよう答えつつも真紀は振り切るように笑みを返す。
それからは夕飯を食べながらくだらないけど面白い話で盛り上がり真紀も直毅も薫がどこに行ったのかは口に出さなかった。

「俺、泊まろうか?」
時計を見て眉を顰める直毅に真紀は笑みを浮かべる。
「平気だから、明日も早いんだから帰った方が良いって。」
軽く流す真紀にそれでも心配そうに見る直毅の背を押し玄関で手を振ると真紀は一人中へと戻る。
静けさで妙に広く感じる室内で玄関の扉へと背を押し付けたままずるずると真紀はその場へと座り込む。
もっと何処へ行くのか聞いとくべきだったと、苦笑を漏らし頭を振り真紀は気合いを入れて立ち上がる。
きっと、遊びに行っただけでもう少ししたら帰ってくると真紀は前向きに考えようとそのまま部屋へと続く階段を登りだした。

まだ続きますのでお付き合いよろしくです。

back next top