空いっぱいに祈る恋 7

「・・・お前、最近調子悪いの?」
「何で?」
「良く、休むから。もう、春休みだから良いんだけどさ・・・」
朝。
直毅の問いかけにも真紀はただ微笑むだけで返した。

あの日から一週間。
顔の傷が思ったよりも酷くて目立たなくなるまで休みを取ることにした後、週末も重なったおかげでもう傷も治り月曜日、開口一番の直毅の言葉に真紀は何も言えなかった。
親友に隠し事をする自分に内心嫌気がさすけれど仕方無い。
あんな事言いふらす事でも無いし、隠し事がどんどん増えていく事にひっそりと溜息を漏らす事しかできなかった。
いつもの様に昇降口で直毅と別れ真紀は一人教室へと向かう。
足取りが重い理由も教室が近づくにつれ動悸が激しくなる理由も分かっているけれど躊躇う足を一歩ずつ前へと進める。
教室に入りクラスメート達と何気なく挨拶を交わしながらも真紀は目である人を探すがこんな朝早くまともに来ている様なら評判も悪くはならないだろうと思い直し席へと着いた。
「新名、平気かよ。病み上がりだろ?」
挨拶もそこそこに隣の席に座るクラスメート、佐伯真治(さえきしんじ)の問いかけに真紀は俯いていた顔を上げると笑みを向ける。
「平気だよ。・・・明日から休みに入るし、すぐに良くなる。」
「そうか?・・・新名は細いんだからもっと食っとけよ。」
真治の的外れな励ましに真紀はつい笑い出す。
「・・・真面目に言ってるから!」
「・・・わかってるよ、ありがとう。」
憮然とする真治に真紀は笑みを向けた。
先生が入ってきたのか騒がしかった教室が静まりかけ真紀と真治も席へと座り直した。
いつもの様に簡単な業務報告だけして朝礼は終わる。
朝礼中にも来なかった彼はその後も姿を見せることなく真紀は帰り際にそっと安堵の溜息を漏らした。
春休みが終わればクラス替えがある。
同じクラスにならなければあと一年平和に過ごせそうな、そんな気がしていた。

********************

「真紀!」
校門前で名を呼ばれ真紀は辺りを見回し覚えのある車の側に立つ思わぬ人へと小走りに近寄る。
「薫さん!・・・どうして。」
「学校はもう休みだし、ね。どこか行く予定有るのか?」
助手席のドアを開けながら問いかけるのに黙って首を振り真紀は反射的に後を振り向く。
さっきまでは隣りにいたはずの直毅を探していつのまにか薫とちゃっかり、挨拶してるのに遅れて気づく。
「直毅・・・素早いな・・・」
「・・・直毅君も送るよ。乗って」
苦笑しながらも後部座席を進める薫にすいません、と直毅は遠慮する事なく後へと乗り込むから真紀はおとなしく助手席へと座り込む。

「珍しいですよね、お迎え。どうしたんですか?」
「真紀、最近体調悪いだろ?・・・だから帰りも心配でね。」
直毅の問いかけにスムーズな運転をしながら薫は笑みを浮かべ答える。
変に疑う事もなく納得する直毅は「優しい兄貴で良いよな〜」と真紀の耳元へと背後からひっそりと呟いてくる。
真紀はただ笑みを返し直毅の家に着く迄世間話で盛り上がる二人の会話に加わろうとはしなかった。
ただ流れていく景色を眺めていた。
「ありがとうございました。・・・じゃあ、真紀・・また。」
「うん、また、ね。」
玄関先で薫に礼を言うと直毅は真紀に手を振り家へと入っていく。
自宅へと走りだした車の中は会話こそ無かったけれど居心地の悪い空間では無く真紀は寛いだまま車窓からの景色を眺めていた。

自宅へと戻り制服を着替えると真紀は薫へと問いかける。
「薫さん、どうして?」
「・・・何が?」
「迎えにこなくても・・・今日はあいつら居なかったし、大丈夫なのに。」
「・・・学校には、だろ?」
「そう、だけど。」
「帰るルート知られてるのに歩くなんて危ないじゃん。・・・言っただろ、気をつけろ、って。」
「・・・・でも・・・」
納得いかないのか煮え切らない真紀に薫は溜息を漏らした。
「真紀はいろいろ鈍いよね・・・だから、悪いやつにひっかかるんだよ。」
腕を引き寄せ耳元へと呟く薫に真紀はびくり、と肩を揺らし離れようとする。
「・・・悪いやつ、って・・・薫さん?」
「酷いな。俺は普通だよ。」
柔らかい微笑を浮かべ話す薫に真紀は距離を取ろうとして逆に腕の中へと抱き込まれる。
「・・・薫、さん」
「真紀を守れるのも、傷つけるのも俺じゃなくちゃ、ね。」
疑問に思う言葉に問いかけ様とした真紀の唇に薫はキスをしてくる。
吐息まで奪いつくすかの様なそのキスにこれから始まる事を予感した真紀はゆっくり、と瞳を閉じる。

********************

「・・・ああっ・・・もう、だめ・・・」
まだ昼間なのに居間のソファーで足を開く自分に羞恥する真紀は喘ぎながらも薫を押しのけようと頭を引っ張る。
下半身に頭を埋めくちゅくちゅとわざと大きく響かせる水音を立て真紀自身に貪りつく薫に更に羞恥は余計煽られ同時に溢れだす快感とでどうしていいのか分からない感情が真紀の中を渦巻く。
身を任せてしまえば楽になるのが分かってはいても素直に身を任せると負けそうで嫌だった。
本当はとっくに負けてるのを真紀はまだ認めたくなくて抗う事しかできなかった。
どうして自分に薫が触れるのか真紀にはまだ分からなかったから。
毎日の様に招く人が違った薫がどうして真紀だけに触れるのかその根本的な疑問を改めて考える時が迫った気がして真紀は頭を振る。
「真紀、集中して。・・・何、考えてるの?」
「・・・何も・・・っ!・・・っああ・・・」
心ここに非ずの真紀にキスをすると薫は秘孔へと指を伸ばす。
先走りの液や唾液だけじゃまだ堅い蕾に指を押し込める薫に真紀は眉を顰め声を漏らす。
奥まで強引に推し進め中をゆっくりと掻き回す薫に真紀は腕を掴んでくる。
「・・・慣らすから、手を離して・・・」
前髪を開いてる手でかきあげて額にキスすると言う薫に真紀は無言で腕を掴む。
「大丈夫だから・・・。」
唇へとキスをして舌を押し込めると怯える真紀の舌へと絡ませ深いキスをしながら腕を掴む手を外し唾液も貪るような深いキスを繰り返ししながら蕾に押し込んだ指を出し入れしだした。


始めた当初よりも喘がされる時間が長くなったのは真紀の気のせいじゃないと思う。
時間も場所も関係なく行為に流れ込むのは変わらないけれど当初よりも愛撫に長い時間をかけられるのが分からなかった。
長い時間かけられればその分だけ長く薫の体温を感じ温もりや匂いに酔いそうになる。
それは真紀が慣らされたのか薫の態度が変わったのかは分からないけれど。
未知の世界がそうでなくなるのが怖くて真紀は抗うけれどそれすら虚しく思える程慣らされていく体が怖かった。
押し入るモノにもう痛みすら感じられないほど慣らされた体に有るのは違和感と奇妙な感覚。
その感覚が真紀には一番怖い感覚だった。
その感覚に溺れる自分が一番怖くて認めるのも嫌だった。


「・・・んっ・・・薫、さん・・」
声を漏らし名を呼ぶ真紀に薫は体を近づけキスをする。
中に入ってるモノの位置が微妙に変わり真紀はキスで覆った口元から少し擦れた吐息を漏らした。
腰をゆっくりと薫が動かしだすと繋がった場所が熱く疼くのを真紀は漏れそうになる声をキスで隠す。
体中に熱さが浸透しているのを気づかれたくなくて真紀は声を漏らすのを抑える為に薫の首に腕を回しキスをねだる。
こんなに近くてしかも深く繋がっているのに気づかれないはずが無いのだと真紀は当たり前の事を考える事すらもできずにただ薫の唇へと自身の唇を押し付ける。
舌を絡め唾液が絡むくちゅり、とした水音にびくり、と肩を揺らした真紀に構わず薫は段々と速度を速め腰を打ちつけながらも唇を貪るのを止めない。
深く奥まで押し入りずるり、と引き出す異物が熱くて真紀はキスに答えながらも漏れ出しそうになる声を抑えていた。

まだまだ続く予定で小休止編です。次からまた頑張ります。

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