空いっぱいに祈る恋 6

脅え方が尋常じゃなくて、思わず薫は手を止める。
「真紀?」
「・・っる、さん?」
優しく抱き寄せられたから、意外な仕草に真紀は擦れた声で呟く。
「洗わないと・・・それから、言いたくないなら何されたかだけでも、聞きたい。同じ事をしてあげるよ。」
頬を撫で、薫は真紀の顔を上げると笑みを浮かべる。
優しい労わる様なその笑みに真紀は呆然と薫を見ていた。

「少し、痛いかも。我慢しろよ・・・」
指で押し開いた場所にシャワーヘッドを当てぬるま湯を出し始めると傷に触れたのか真紀は眉を顰めるがそれだけで、諦めてるのか抵抗はなかった。
奥まで指をいれ粘ったものを出し始める薫に真紀は羞恥と流れこんでくる液体に良く分からない、けれど覚えのある感覚を感じ顔を赤くしたまま洩れそうな声を必死に抑える為唇を噛み締める。

身勝手に奥を掻き回す乱暴な、がさがさとした指先じゃなくて、慎重に奥を探る薫の長く見た感じは細い指先を思い出し、真紀は昨日の自分を思い出し必死にうち消そうとする。

「・・・っん・・・んんっ」
「・・・・感じてるんだ、真紀?・・・起ってきたよ・・・」

ぺろり、と噛み締める唇を舌で舐め囁く薫に真紀はただ頭を振る。
奥まで探る指が増えてる事も。
自分のものが刺激でだんだんと反応を示すのも。
真紀はどうしても認めたくなかった。
行為が嫌だ、と言えなくなるのが怖かった、なのに体は与えられる刺激に貪欲で薫が舌先で唇をつつくそれだけの触れ合いだけでも耐えられず、ついに口を開く。
すぐに絡みついてくる舌、溜まる唾液をも啜られ、濃厚なキスを繰り返しされる。
シャワーヘッドが転がり温い湯が跳ねまくるのも、気にならなかった。
シャワーの水音に混じり聞こえる喘ぎ声が浴室に響くことさえも気にならずに真紀は貪るように食いついてくる薫を抵抗もせずに受け入れる。

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「・・・んっ・・・んっ・・・」
「良いよ・・・もっと、丁寧に・・・そう、良い感じ。」
優しい言葉をかけられ頭を撫でられるから真紀は口に含んだものを必死で愛撫する。
あれだけの嘔吐感を今はまったく起こさずにただ言われるままに舌を動かし先端を舐め口に含み切れない場所を手で扱く。
ただの肉の塊が熱く芯を持ち滾るのを口中で感じ舌先に触れる苦いどろりとした粘液でさえも舐め取る。
おかしくなってる気がする。
自分にもついてるはずのものを必死で舐めて吸いつき嫌悪するはずの行為に熱中し、自身からも先走りの液を漏らして反応するのを感じる。
「・・・真紀、先っぽ濡れてるよ。オレの銜えて感じてるんだ」
思ってた事を指摘され真紀は口の中のものについ歯を立てる。
「・・・・っ!ごめん、言わないから続けて。・・・そう・・。」
頭を撫で謝る薫に真紀は歯を立てた場所を舐めそして吸いつき奥へと銜え込む。

ぬちゅ、ぬちゅと浴室に響く卑猥な水音もいつのまにかシャワーが止まっていることも必死に薫のものを銜え込んでる真紀は気づかなかった。
「・・・真紀、出る!」
言葉と同時に口中にどろり、とした液が広がり真紀は口を離すと飲み込む。
不味いとしか思えないけれど出すことが頭の中に無かった。
キスをしてくる薫に真紀はただ答える。
まだ起ち上がったままの薫のものが視界に入り真紀は無理やり視線を逸らした。

キスを続けながら薫は真紀の足の間へと体を入りこませる。
先程の強姦の時にはただ痛みしか感じられなかった場所を薫が散々指と舌で慣らしたからなのか、真紀が散々濡らしたからなのか、ぐちゅり、と卑猥な水音と共に熱い塊が押し込まれた時には、異物感は感じても、あの激痛は訪れずに真紀の中は多少拒みはしたけれど押し出そうとするほどの否定じゃなかった。
「・・あっ・・あっ・・」
「真紀・・・」
耳元で名前を囁きながらゆっくりと奥へ奥へと進んでくる薫に真紀はただ喘ぐ。
思考がうまくまとまらなくて熱く火照る体へと入り込んでくる温もりの事しか考えられなかった。
「・・・痛くない、みたいだね」
全部中へと埋め込んだ薫の言葉に真紀は身じろぐ。
口を開けば喘ぎしか出ない気がして唇を噛み締めた。
真紀の返事は期待して無いのか薫はゆっくりと動きはじめた。
中で絡みつく気がする。
動くたびに形が分かる位には軽く締め付け様とする体の変化に真紀は躊躇うけれど薫は何も言わなかった。
どんどん変えられる気がする。
怖いくらいの快感に身を任すのが当たり前になるのが怖くて真紀は唇を噛み締めてるだけじゃ心もとなくて口に手を押し付ける。
「・・・っふ、んっ・・・!」
散々感じる所だと教え込まれた場所に触れる薫に真紀はびくり、と身じろぐ。
口を抑えていた手を離させキスしてくる薫に真紀は頭がくらくらしてくる。
浴室の湿度でばてているのか、行為にばてているのかも分からず意識が遠のくのを感じる。
リアルに最後まで感じたのは入り込む薫の熱さだけだった。

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ふかふかした温もりに安堵して真紀は目を開ける。
視界には見慣れた自分の部屋が移り、起き上がろうとして腰の痛みに呻き、パジャマ代わりのジャージ姿の自分に真紀は暫く呆然とする。
どうしてここにいるのか理解できない頭がしだいに覚醒しだして真紀は顔を赤く染める。
今がいつかわからなくてベッドから降りると真紀は部屋を出て階下へと向かう。

「真紀、気分は?」
テレビを見ていた薫は真紀に気づくと手招きで彼を呼び問いかける。
「腰痛い・・・けど、平気。」
「そう。座れば。」
答える真紀に薫はソファーを叩き横に座るのを勧める。
「薫さん?」
「・・・何もしないから、聞きたいだけ。」
おずおずと座る真紀に薫は肩へと手を伸ばし引き寄せる。
離れようとする真紀へと体を密着させると薫は口を開いた。
「寝て、落ち着いたなら誰にされたか、教えてくれない?・・・気になって他の事に手が回らないんだよ。」
「・・・聞かないって・・・」
「言ったけど無理!・・・真紀に触れたヤツの事ちゃんと知りたい。・・・罪になる事はしないって約束するから。」
お願い、と言う薫に真紀は溜息を漏らす。
「真紀?」
「・・・首謀者の人は薫さんの知り合いだと思う。だから、名前も知らない。・・・後はクラスのヤツが一人居た・・・。」
ぼそぼそ告げる真紀に薫は何人?と呟く。
「四人。でも、参加してたのは多分三人かと・・・」
「抑え付けただけでも数に入るよ。で、クラスのヤツの名前は?」
「何で、何もしないって。」
「しないけど、名前知りたい。・・・誰?」
「・・・大島、大島裕樹。後は、知らない。」
「そう。」
呟くと薫は真紀をそっと抱きしめると頭を撫でる。
規則正しい鼓動と温もり、撫でる手の優しさに真紀はうとうととしだす。
「真紀。気をつけろよ。」
ぼんやりとしてくる意識の片隅に薫の言った言葉がいつまでも残っていた。

何も無かったような日常がまた始まる。
なのに真紀は遠く離れていく日常を感じていた。
自分の中の常識がどんどん崩れていく様な・・・そんな。

続きます。そして何も語れません。

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