「んっ･････あっ、だめ･････そこは･････」
「感じてきてるよ･････ほら、我慢しないで･････」
履きなおしたはずのズボンがいつのまにかまた脱がされ、ズボンの隙間から下着の中に入り込んできた手が直に自身を揉み扱き、夏は思わず呻く。宥めながらもキスを繰り返してくる秋紀に夏は言葉も無くただ鼻を啜る。
触れていただけの秋紀のモノは布越しだというのに、どんどん自己を主張してくる。
狭いベッドの上、圧し掛かられて、身動きもろくにとれずにされるがままの夏は意思とは関係なく熱くなる体にひたすら戸惑っていた。
「･････ねぇ、俺のもこんな風に触って。」
耳元に息を吹き込みながら告げる秋紀に夏はぶるり、と身を震わせる。ただ当てただけの手を取り、秋紀は夏の返事を聞くより先に手早く前を開くと夏の手を潜りこませる。
布越しでも反応は凄かったのに、直に触れた自分にもついているモノなのに、まるで別の生き物の様な張りと大きさを感じ、夏はびくり、と触れた手を思わず握り締める。
「･････夏。」
「同じくすれば･････良い？」
名を呼ぶ秋紀に手を開きそろそろと握り締めようとしてみながらも夏は自分の手の中に納まる代物では無いのに何となく気づき、ほんの少しだけはある男のプライドの欠片がますます小さくなるのを感じ唇を思わず噛み締める。
生温く、でも芯を持ち起ち上がる肉の塊は夏の手にはやはり収まりきらなかった。それでも、さわさわと手を動かしだす中、更に膨れ上がるソレに夏はこくり、と唾を飲み込み喉を鳴らした。
「夏、夏･････もっと、強く握って･････」
耳元で告げる声に更に握り締める夏の手の中、ソレはひくり、と蠢く。握られていた自分自身にも力を篭められ、夏は思わず開いている手で秋紀の腕を掴んだ。

「秋紀、もう･････願いっ･････！」
びくびく、と体を震わせ微かな吐息と共に告げる夏の声に秋紀はやっと顔を上げる。濡れて光る唇が目に入り、思わず顔を逸らす夏に秋紀は一度は放した体をまた近づけてくる。
「･････もう、何？･････どうするの？」
唇が触れ合う程近くに顔を近づけ話すから、息がかかり、その熱い吐息に夏は身動ぎひとつまともに出来ない体をただ揺らす。
「言わないと、分からないだろ。･････夏、どうするの･････言って･････」
「･････欲しっ･････やっ、そこ･･････んんっ･････」
微かな声でやっと搾り出した声なのに、甘い吐息で語尾が消える。ぐちゅり、と音が響き入る場所ではなく本来なら出す場所に何かが潜りこんでくる。痛みは無い、けれど、体の中に入る異物に夏は眉を顰める。
「まだ、指だけど･････平気？」
ちゅっ、と軽いキスを何度も送りながら告げる秋紀に夏は唇を噛み締めこくこくとただ頷く。口を開けば自分では想像もできない声が漏れそうでそれが怖かった。
まるで秋紀の手の中、別の生き物に作り変えられている、そんな感覚に襲われ夏はいつのまに繋がれていたのか分からない手に力をこめ握りかえした。
「･････っ、やぁ･････痛っ、くっ･････」
「ごめん、我慢して･･････っん、もう少し･････」
痛みは指を入れられた時には感じもしなかったのに、太さや大きさが違うからなのか、皮膚を突き破られるそんな感覚と共に入り込んできたソレはかなりの痛みを夏に与えた。
受け入れる夏の比ではないだろうけれど、そこそこ秋紀も痛いのか眉を顰めてはいるけれど、そこで止める気はなく、強引に腰を進めてきた。


*****


その痛みが糸を引いているのか「痛い」と呟く夏の声に秋紀も暫くは入り込んだままじっとしてくれていたけれど、そのうちゆっくりと腰を動かしだした。寄せては返す波の様に体の奥で動く異物の感覚に夏は唇を噛み締め、声を殺す。
「夏、我慢、しないで･････声出したら、少しは楽になるから、な。」
動きを止める事なく、伸ばした手で夏の頭を撫で、そのまま頬まで滑らせながら、告げる秋紀に更に強く夏は唇を噛み締める。
「･････っ、ちょっと･････締めるな･････」
体の奥がぎゅっと力をこめた気がした夏の上、秋紀が眉を歪め擦れた声で呟く。同時に動きが止まり、思わず安堵の息を吐いた夏はぐぐっとその瞬間更に奥へと異物が入れられたのを感じる。びくり、と揺れる体を体で抑えこんだ秋紀が口元を少しだけ上げるのを目の端に捉えた夏はこくり、と喉を鳴らす。
「･････秋紀･････」
「うん、大丈夫だから･････動くよ･････」
不安そうに名前を呼びかける夏に秋紀は言葉どおりに動き出す。
奥まで入り込んだ異物がぐりっ、と内壁を擦りあげ夏はびくびくと身を震わせる。
「息、吸って、吐いてを繰り返して･････そう、そのまま続けて･････」
耳元へと囁く秋紀の声に夏は言われるまま深呼吸を繰り返す。吐いて吸って、また吐いて吸って、相変わらず体の中に別のモノが入っているのに痛みは少しづつ和らいで別の感覚が生まれてくる。
擦りあげられるたびに体の奥に熱が生まれ、やんわりと捕まれた自分のモノが少しだけ反応しているのに気づく。
「･････あっ、だめ･････んんっ･････」
「大丈夫。･･････こっちもだいぶ気持ち良くなってきたよ、だから、もう少し。」
緩やかだった動きが少しづつ速度を上げるのに、呻く夏に秋紀は唇に何度もキスをしながら呟き、夏自身を扱く速度も上げてくる。渦巻く熱がはっきりと形になる。自分のモノの先から零れだす先走りの液、体の奥まで飲み込んでいる秋紀のモノが更に大きく反応し、膨れ上がり、突かれる先が濡れるのを感じる。
体の奥に迸る熱を感じながら夏は意識がぼんやりとしていくのを感じていた。

「･････気分は？」
ぼんやりと開いた目に映る自分を見る秋紀の不安そうな顔に思わず夏は笑みを浮かべる。
「･････夏？」
「平気･････何か、体･････だるい･････」
「ああ、そう。･････痛い所は？」
別に、と呟き起きあがろうとした夏は思わず呻く。
「夏？！」
「･･････腰が痛い･････」
「すぐに良くなる。･････風呂とかいけそう？」
「･････入る。」
起き上がる夏に秋紀は黙って手を貸すとそのまま軽々と抱き上げる。
「秋紀？」
「･････お風呂だろ？･････もちろん、入れてあげるよ、お互いに色んなものでべとべとだし、ね。」
そのまま口ごもる夏を抱きかかえた秋紀は笑顔で真っ直ぐに浴室へと歩き出した。
「あのさ、あれって･････何？」
「何って、セックスだろ？」
「･････じゃなくて、俺ら兄弟だろ！」
「だね。正真正銘血も繋がってるし、だから、何？」
全然動じない秋紀の返答に夏は困った様にずるずるとバスタブの中に沈み込む。兄弟なのに、初めてのセックスの相手が男、しかも兄なんて誰にも言えないだろ、と考え込む夏に構わず秋紀は呑気に鼻歌を歌いながら体を洗い出している。
「･････もう、二度としないから。」
ぼそり、と呟く夏の声が聞こえていたのか、鼻歌を止めた秋紀が振り向く。
「･････何、だよ」
「お前、頭堅いよね。柔軟性とか持ってないのかよ。」
「･････持ってても、兄はまずいだろいくらなんでも。」
「そう？･････同性で良かったじゃん。これで異性なら大変よ。ゴムつけんの忘れたら妊娠の危機だってあるんだぜ。」
「それだけの理由で弟に手を出す兄って何だよ、欲求不満は外で解放しろよ！」
泡を顔を上げた夏にふっ、と吹きかけながらさらり、と答える秋紀に夏は泡を避けると同時に顔も逸らす。
「失礼だね、お前。俺はそこまで節操なしじゃないよ。好きじゃなければやんないし。」
逸らした顔に両手を伸ばし無理に顔を自分へと向け告げる秋紀に夏は眉を顰める。
「･････好きって、だから･････兄弟･････」
「だから？弟に欲情して悪いかよ！･････しょうがないだろ、起つんだから！」
まともな事を言ってないと頭では理解しているのに、夏は真剣な顔で下ネタを告げる秋紀にただ笑いだす。これが告白だなんて、本当に色気も何もないのに、目の前で笑いだす自分を見て首を傾げる秋紀を見てると悩んでいるのがバカらしくなってくる。
これはもう開き直った方が勝ちというのだろう。
「俺は秋紀ともうやんないって言ったら？」
「･････一度やったら二度も三度も同じだろ？･････そのかわり、他のヤツには触らせないけど。」
断固拒むから、と告げる秋紀に夏は顔を伏せる。
浴室の湯気なんかじゃない、確かに秋紀のせいで火照る顔を隠したかった。


*****


どこからが「普通」でどこからが「異常」なのかその線引きはとても難しいのだそうだ。境界線なんてどこにも無い、踏み込んだ先が異常なのか普通なのかは自分の判断のみ。ならば、普通だと信じれば自分の中でそれは全て普通になる。世間の中、ではなく、自分の中では至極当たり前へと変わる。判断一つで変わる人生、それが人の生き方だと何かの本にぼんやりと書いてあったのを夏は思い出す。
「伊藤〜どうした？」
「･････いや、そうだ･････これ、ありがと。面白かった。」
鞄の中から取り出し渡す分厚い本を受け取った悠里はその本を抱きかかえもう一度夏の顔を見る。
「･････何？」
「うん、何かふっ切れた？･････そんな顔してる。」
「そう？いつもと変わんない、と思うけど？」
相変わらずのんびりしている見かけなのに、たまに確信をついてくる悠里に夏は内心苦笑を零すと笑みを返した。学んだ事は一つだけ、全てとぼける事、それだけ。
誰にも気づかれてはいけない秘密を抱える事になった自分の進む道を守るために夏が決めた事はひとつ。歩む道を誰にも見せない、ただそれだけだから、きっと愛想笑いだけは人一倍巧くなりそうな自分に夏はひっそり、と苦笑を零した。

帰宅して賑やかな家に躊躇いながらも、いつもなら真っ直ぐ部屋に戻るはずの夏はそのまま居間へと歩き出す。
「お帰り〜ただいま、元気にしてた？」
「おかえり、夏。･････これ、お土産だって。」
相変わらず変わらないその姿と声に「母はいつも元気だ」と思いながらも隣りで笑みを浮かべる秋紀の微妙な表情に首を傾げながら夏は二人へと近づく。
「ただの温泉旅行じゃないの？･････何で、こんなに。」
「いやね。温泉だけで終わるわけ無いじゃない！･････観光もしっかりしてきたわよ。だけど、やっぱり寒いわよね、あっちは。」
眉を顰め呟く母に呆れながら土産を避けようとした夏は包装紙の包みをぼんやりと見る。
「母さん、旅行って･････どこに行ったの？」
「え？･････だから、温泉の名所巡りと観光よ。何？」
土産を手に取りながら呟く夏に母は首を傾げて呟く。
「だから、場所！温泉は分かったから、どこの温泉だよ！」
「言ってなかった？･････北海道よ、ほら草津と同じくらい温泉が多いでしょ？観光名所もあるし。」
にこにこと笑みを浮かべ告げる母に夏は土産を放り出すと立ち上がる。
「俺、うちにお土産は一切買わないから、着替えてくる！」
怒鳴ると足音も荒く出て行く夏を呆然と見送った母はまだ隣りにいる秋紀へと目を向ける。
「夏、なんであんなに、怒ったのかしら？」
本気で不思議そうに呟く母に秋紀は耐え切れなかったのか思わず吹き出した。
「母さん、夏の修学旅行ってもうすぐだよね。場所、どこだったか覚えてる？」
母の疑問に答えるべく話しだした秋紀に彼女は顔色を思わず変える。下の息子の旅行先が自分達が旅行に行った場所だと今更気づいたのだ。
「どうしよう、当分怒ってるかしら？」
「･････さぁ、でも本当にうちの土産は買ってこないかも。ほら、夏意外と頑固だから。」
苦笑と共に呟く秋紀の目の前彼女は大きな溜息を零した。
それから、夏の旅行の初日のその日までに家族総出であの手、この手で慰めたおかげか、機嫌も直った夏は元気に旅行へと出かけて行った。
「お土産、秋紀のだけは豪華にしとくからね。」
ベッドの中、笑顔で告げられたのはその前夜の事で、暫く会えないからと激しく抱き合い人心地ついたときだった。
肩に頭を摺り寄せ笑顔を向ける夏に秋紀は思わず注意したくなった。
「頼むから誰にも笑いかけないでくれ！」と。機嫌を損ねたくないからこそ言わなかったけれど、そのかわりに夏が呻くまできつく腕の中に抱きしめた。

何とか夏編終了でございます。かなり無理矢理ですが。
で、次回からは、修学旅行編･････もう冬だけど、すいません；

back　next　top