「終わりました〜これで、当分教科書を眺めなくてすむぜ!!」
「夏休みは塾行かないの?・・・・・受験が近いのに・・・・・」
ばんざい、と両手を上に上げ大きな声で叫ぶ夏に悠里はぼそり、と小さな声で呟く。その声を聞きつけたのか夏はそろそろと悠里へと顔を向けると恨みがましい目を向けてくる。
「・・・・・何だよ」
「いーえ、滝沢君は友達がいの無い人だなんて思っちゃいないですよ。」
「おい、どういう意味だよ!」
「・・・・・楽しみに水を差す言い方は止めろよな、先を考えるとへこむじゃねーか。」
肩を疎め首を振りながら呟く夏に悠里は瞳を伏せると、ごめん、と小さく呟いた。
「一応の山は越えたから、とりあえず明日の事は考えないで飯でも食ってく?」
そっと溜息を漏らし、問いかける夏に悠里は顔を上げると大きく頷きながら笑みを向けてきた。
「夏休み、もう予定立ててるのか?」
「うーん・・・・・一応塾に行くぐらいかな?そっちは?」
「俺もかな。・・・・・後は、小池達と遊ぶんだけど、お前も行く?」
「部活の奴らだろ?・・・・・俺、邪魔じゃない?」
「人数多い方が楽しいって、どうする?」
ファーストフード店の少しだけ奥まった席で二人だけのテスト終了会もどきを始めた夏と悠里はばくばくとバーガーに食いつきながら話している。既に二人の前には残骸の丸まった紙が何枚かくしゃくしゃになり置いてある。
「邪魔じゃないなら、俺も入れといて。」
「オーケー!」
言いながらもジュースを啜る夏に悠里は自分も目の前の水滴で濡れた紙コップへと手を伸ばした。
*****
「海?・・・・・誰と行くの?」
「友達と!」
「それってさ。ナンパ目的の海の旅じゃないよな?」
「・・・・・違う、と思うけど・・・・・・反対?」
ソファーでクッションを抱え寛ぐ悠里が上目遣いで見上げてくるから泰隆は苦笑を浮かべるとそのまま近づく。
「泰隆さん?」
「・・・・・学生、最後の遊べる夏だろ?・・・・・楽しんできな。」
「うん!」
隣りに座り頭を撫でてくる泰隆に悠里はクッションを放り投げるとそのまま抱きついてくるから、勢いで倒されながらも苦笑を浮かべる泰隆に顔を近づけた悠里は滅多に自分からはしないキスをしてくる。
「ここで、する?」
「・・・・・キスだ、け・・・・・」
唇を離し、ぼそり、と呟く泰隆に慣れない事をしたからか顔を赤くした悠里は小さく返す。だけどもう一度互いを見つめた二人は互いの体へと手を伸ばし更に深いキスへと溺れていった。
皮張りのソファーの上、いつものベッドと違い狭い場所で折り重なり、滑る体を引きとめ、押さえつけ緩やかに腰を動かす泰隆の下、悠里は汗で湿った髪を吹き上げると、落ちそうな体を支えるために手を伸ばす。 抱きしめる体も汗で滑る、だから爪を立てる、こんな行為の時に躊躇いなんかどこにも無かった。 ぎりぎり、と肌に食い込む爪の痛みに眉を顰めながらも、泰隆は更に激しく腰を動かす。 煌々と照らす蛍光灯の下、きらきらと光る汗を撒き散らしながら、欲望に潤んだ瞳を向けてくる泰隆に悠里は体の奥が更に熱くなるのを感じる。
「・・・・・っああ、んっ・・・・・やっ、ふか・・・・・・イイっ!!」
「悠里、もう、イきそう?」
「っは、ああんっ・・・・・・イく、イきそう・・・・・・」
「・・・・・・はっ、イイよ・・・・・・凄い、締めてる」
「・・・・・・・っあ、あああっ!」
更に速度を速めながら耳元で呟く泰隆にぶるり、と震えた悠里は更にきつく泰隆を抱きしめる。体の中で弾け溢れだす飛沫に誘発され、何度かびくびく、と体を揺らした悠里は自身の先からも独特の匂いのする液体を溢れださせた。
「いっぱい、出たね。」
まだ、中で蠢く存在に顔を赤く染めたまま見上げる悠里の頬へとキスを落としながら泰隆は呟くと何かを話す前に悠里の唇を塞いだ。少しだけ体勢が変わったからか、向きが微妙に中で変わるソレがまだ、熱を吐き出した後なのに、まだ、存在を示すぐらいの硬度を保っているのに気づいた悠里は目を閉じると背に回した手で更に強く爪を立てた。
*****
結局ソファーで始めてしまった行為はベッドへと移されても変わらず激しく熱い夜を過ごした。 ベッドへと辛うじて浴びさせてもらったシャワーとその前の行為で疲れた体で横たわる悠里の横、頭をがしがしと乱暴に拭いている泰隆へと目を向ける。 学校ではシャツの下に隠された体は適度に筋肉のついた、逞しい体だと悠里は知っている。 男らしい、体に比べ同じ男なのに、未だ身長こそ伸びたけれど、目の前の大人には遠く及ばない肉のつかない骨と皮だけの、ついでに生白い腕を見た悠里はこっそり、と溜息を漏らす。
「・・・・・ごめん、そんなにしんどかった?」
「違うよ・・・・・俺も、逞しくなりたいな、とね。」
「逞しく、って・・・・・大丈夫、悠里は十分タフだよ。」
「そういう意味じゃないから!」
溜息を聞きつけ謝る声にふるふると頭を振り悠里は呟く。見当違いの言葉を告げてくる泰隆に更に頭を振りながら答える悠里に泰隆は苦笑を浮かべると頭を撫でてくる。
「海で絶対に焼きまくる!」
「止めとけよ、悠里は赤くなるだけ、じゃなかったっけ?」
うーん、と唸る悠里に泰隆は顔を寄せると耳元へと唇を近づける。
「可愛い悠里のままで帰ってこいよ。」
「・・・・・可愛い、じゃ・・・・・やだ。」
唇を尖らせぼやく悠里は息を吹きかけられ、くすぐったいのか首を竦める。そんな悠里の仕草に泰隆は笑みを浮かべたまま何度もキスを繰り返した。
梅雨明け宣言は早々に出され、ぐっと気温は上がったまま夏休みを迎えた。 家と塾と泰隆の部屋、その三つを行き来しながら、悠里はすっかり夏になった空を見上げる。 海へ行くのは八月に入ってすぐに決まった。近場へ行くはずが、思ったより人数も増えたからとキャンプの出来る場所で三泊ぐらいになる、と夏からの決定メールが来ていた。 泊まりにはあまり良い顔しなかったのは親よりも泰隆だけど、自分も悠里を部屋に泊めるから大きく言えない彼は眉を顰めただけだった。 鞄を持ち直すと悠里は歩きだした。 塾が終われば泰隆に会える。ここの所、入り浸りの恋人の顔を思い出し、少し笑みを浮かべた悠里は頭を振ると唇を引き締める。 楽しい夏休みを迎える為にも、コツコツと目の前にある事をこなして行くために歩きだした悠里は目の前に聳え立ったビルの中へと足を踏み入れた。
夏休み編でございます。ラブな二人は置いといて色々問題もあるのでは?と。 それではまた次回♪
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