潤んだ目は焦点が微妙で泰隆は何度も悠里の顔へとキスの雨を降らせる。次第に光を取り戻した瞳と裏腹に顔色はどんどん赤く染まっていく悠里はついに瞳を伏せてしまう。
「・・・・・悠里?」
「ごめんなさい、俺だけ・・・・・」
軽いキスを何度も繰り返しながら名を呼ぶ泰隆から視線を逸らしたまま悠里は小さな声で呟く。いつもならもう少し我慢が出来るはずなのに、熱を持った体は悠里の気持ちを大きく無視している。 一度達したはずなのに、肌が触れ合っていると意識した、それだけでまた熱を持ち始める自分を自覚もしていたから尚更赤く火照る顔を止める事すら出来なかった。
「いつもより、感度良いね。・・・・・興奮、してる?」
低い声で耳元へと囁く声にびくり、と体を震わせ身動ぎする悠里は泰隆から離れようとするけれど、それより早く背へと回された手に阻止される。
「・・・・・・っや、だ・・・・・」
「逃げるなよ、まだ・・・・・これから、だろ?」
拒む悠里の顔を強引に上げ目線を合わせた泰隆は笑みを浮かべ告げるから、悠里は何も言えないまま唇を噛み締める。その噛み締めた唇にそっとキスを落とし、また熱を持ち出した下肢へとそっと触れた泰隆に悠里はきつく瞳を閉じる。
目を閉じた事でやけに耳につく、くちゅくちゅと粘着質な音に既に真っ赤に染まった顔で悠里は無意識に頭を振る。 ねっとり、と自身に絡みつく生暖かいソレは先端を軽く突くとすぐに全体を包みこむように覆う。 断続的に繰り返される同じ行為、だけど、どんどん力を漲らせる自分自身には更に熱を持たせるそれに、悠里は漏れそうな声を唇を噛み締め堪える。ちゅくちゅくと響く音が溢れだす先走り、泰隆の唾液、そして互いの汗で更にぐちゅぐちゅと濡れた音へと変わっていく。耳に響くその音についに耐えきれず開いた瞳で悠里はぼんやりと天井を見上げる。体の奥、今にも溢れだしそうな熱を堪えそろそろと下肢へと手を伸ばした。
「・・・・・泰隆、さん・・・・・・」
「んっ・・・・・・もう、だめ?」
触れた髪を引きながら呟く悠里に泰隆は掴まれた髪をそのまま顔を上げると笑みを浮かべる。 温もりが消え、熱を孕んだ自身へと冷たい空気が触れ、びくびくと体を奮わせながら悠里は泰隆へと目を向ける。 いつもと何ら変わる事の無いその笑み、だけど、今にも吐き出しそうな熱を帯びた瞳に悠里は熱を吐き出しそうに体の内に秘めているのは自分だけじゃないと感じる。 だから、髪を掴んだ手を放し、ただ伸ばす、泰隆の目の前へと。 いきなり伸ばされた手に少しだけ笑みを崩した泰隆はすぐに口の端を緩めると身を起こす。 いきなり軽くなった体に、少しだけ身動ぐ悠里の伸ばした手を取るとすぐに顔を近づけてくる。
「・・・・・やすっ・・・・・・んっ・・・・・・」
驚き名を呼ぼうとする悠里の口を塞ぎ、取った手に手を絡めるとそのまま再びキスを繰り返す。絡まり、握り締められた手を悠里はあまりに不意打ちなキスで息苦しくなりながらも握り返した。
*****
「・・・・・・あっ、んっ・・・・・・ふぁっ・・・・・・」
「んっ・・・・・・・んんっ・・・・・・」
部屋を覆うのは互いの漏れる息の音、微かな喘ぎ、肌の擦れ合う微かに濡れた音をも奏でる音、そして空気までもが濃密な空間を作り出す。体の奥まで熱い熱に穿たれ、止まらない先走りの液で、悠里の腹は白っぽく渇いたものまでついている。それでも止まらない泰隆は悠里の腰をがっしりと掴んだまま更に奥を穿とうと腰を振る。濡れた音が泰隆が腰を振るたびに響くけれど、悠里は熱で潤んだ瞳で泰隆の肩を掴んだままもう止められない声を漏らす。
「・・・・・・ああっ・・・・・・やっ、ふか・・・・・・いっ、んんっ・・・・・・!」
「いいよ・・・・・・もっと、啼いて・・・・・・」
唇をべろり、と舐め笑みを浮かべる泰隆の声に悠里は体をびくびくと震わせる。 奥を掻き回され、中も外もドロドロなのにそれでも熱は更に先を目指し止らない。篭る熱を少しでも楽にしたくて、掴んだ肩をありったけの力で悠里は握り締める。
「・・・・・んぁ・・・・・・も、う・・・・・・ああっ・・・・・・!!」
振り落とされない様に肌に爪を立てしがみつきながら喘ぐ悠里の声に泰隆は唇を噛み締めると細い腰を引き寄せる。ぐぐっと音がするほど手に力を篭めた泰隆に悠里は眉を顰める。がつがつとまるで体の奥を喰われているかの様に少しだけ乱暴に強引に進みだした泰隆の肩から背へと回した手で必死にしがみついた悠里は溢れ出し零れ落ちそうな熱を堪える。何度も抱かれた、何度も同じ事を繰り返したけれど、そのどれよりも熱く、どれよりも性急で忙しない、なのに感じた事のない肌を刺す熱い視線に悠里は余裕なんか全くないはずなのに自然と浮かぶ笑みを止められなかった。 奥を穿たれる度に漏れる熱が嬉しい、しがみついた自分をそれ以上の力を篭めて求める泰隆に悠里は笑みを浮かべたまま舌を伸ばす。すぐに絡み取られ、吸われ、息もままならないのにただ嬉しいそれだけが溢れだしてくる。
「んっ、すき・・・・・・泰隆、さんっ・・・・・・すっ、き・・・・・・んっ・・・・・・」
「うん、俺も。好きだよ、悠里。」
キスの合間に喘ぎながらも呟く悠里に泰隆は答えながらも腰を動かすのを止めない。ぐちゅぐちゅと更に激しくなる水音は上からも下からも聞こえてくる。湿っぽく、熱の篭められた部屋に更に熱気が充満する。
「・・・・・・っあ・・・・・もうっ・・・・・・・」
「ん?・・・・・俺も、イきそう!!」
しがみつく手に更に力をこめ眉を顰め喘ぐ悠里に泰隆は滲んだ汗でべとべととはりついた髪を手で払ってやりながらも答えると腰に当てていた手を背に回しきつく抱きしめる。汗やそれ以外のもので、互いの体のどこにも渇いた場所はなくて、ずるずると滑る手で必死に抱きしめながらも、篭る熱を吐き出し更なる高見に上る為の道を進みだした。 溢れだす熱の奔流に巻き込まれ頭が白くなるのを感じながら悠里は最奥に吐き出された熱い熱を感じていた。
「・・・・・・平気?」
眉を顰め覗き込んできた顔にぼんやりと開いた目を向けた悠里は何も言わずに笑みを浮かべる。まだ体の奥に何かが入っている感覚が抜けなくて身動ぎした悠里はびくり、と体を揺らし、顔を上げる。 身動ぎした時にぐちゅり、と鳴った音で、まだ入ったままなのに気づいた悠里に泰隆は笑みを向ける。
「・・・・・・まだ、全然足りないだろ?」
「だから、って・・・・・・後でするから、一端、抜い・・・・・・っん!」
「まだ、だめ。」
眉を顰めて抱きしめられた腕から逃れようとする悠里より早く泰隆は腰を動かす。中に嵌った異物が動きぶるり、と震える悠里の頬へとキスをしながら泰隆は腕を引き寄せる。
「・・・・・んんっ、だ、め・・・・・・あんっ・・・・・・」
「大丈夫、一度イッタから、今度はすぐ、だよ。」
拒む悠里の背を手で擦りながらも腰を動かしだした泰隆は宥める様に何度もキスを繰り返してくる。一度、中に出された精液が残っていて、ぐちゅぐちゅと鳴る音は結合部分よりも更に中からも聞こえてくる気がして悠里は唇を噛み締める。 もう一度やる気のない悠里の感情とは裏腹に自身は熱を取り戻し、伸ばされた泰隆の手の中更に煽られる。
「・・・・・んんっ、やっ・・・・・・もう、むっ・・・・・・り・・・・・・」
「大丈夫だよ。・・・・・・・ほら、こんなに熱い。」
頭を振りそれでも拒む悠里にキスを繰り返しながらぐりぐりと中で異物を掻き回し最奥を突く泰隆に悠里はとうとう拒む手の力を抜いた。嬉しそうに舌で唇を舐めてくる泰隆の首筋へと手を回しながら、悠里は唇を開く。 滑りこんできた舌はすぐに舌を絡めとり吸いついてくる。 瞳を閉じると悠里は体中煽られ孕みだした熱を持て余しながらも、泰隆を更に強く抱きしめた。
*****
ぴちゃん、と洗面器に落ちる水滴をぼんやり眺めながら、精根尽き果てるというのはこういう事をいうのだろうか?とぼんやり思いながらも悠里は重い溜息を吐く。 溜息を聞きつけたのか、背後から悠里を抱きしめたままの泰隆が顔を覗き込んでくる。
「悠里?」
「・・・・・・もう、無理だから・・・・・・絶対に無理!!」
名を呼ばれぶんぶんと勢い良く頭を振る悠里に泰隆は苦笑を浮かべる。
「分かったから、今はこれから寝るだけだし・・・・・・って、ごめん!・・・・・お前、家、平気?」
「今更聞く?・・・・・・多分、大丈夫だと思う。俺、男だし。」
「そう?・・・・・・明日、俺も着いて行こうか?」
というか今日か、と呟く泰隆に悠里は更に頭を振り、くらくらと眩暈まで起こす。
「やだ、先生が来ると色々困るから。」
「・・・・・・なんだよ、それ。」
それでも言わないとと呟く悠里を抱きしめ背後から頭を擦りつけ呟く泰隆のすねた声にまだくらくらするのに、口元に笑みが自然と浮かぶのが我慢できない。ちゃぷちゃぷと動く度に波が出来る浴槽の中は男二人が入ると狭く感じるのに、それでもぴったりとくっついているのが嬉しい。
「・・・・・何?」
「何でもない!・・・・・とにかく、平気だから、来るな!」
顔を俯かせ呟く悠里に泰隆が背後で首を傾げているのを感じるけれど、本人に面と向かってなんて照れくさくて、恥ずかしくて言えない。温もりが愛しい、なんて思うだけで火照る顔を更に俯かせた悠里はここがお風呂である事が有り難かった。何か、甘く今にも溶けそうで更にくらくらしてくる自分を奮い立たせた悠里は勢い良く立ち上がる。
「悠里、バカ、お前。いきなり、立ち上がるから!!」
途端にふらつく体を腰を持ち支えながら泰隆はゆっくり、と立ち上がると引きづる様に悠里を抱え早々に浴室から出ると手早くタオルで包んだ悠里をソファーへと座らせ自分はキッチンへと歩いていく。 その逞しい背中をぼんやり上せて熱に潤んだ瞳で見送った悠里は一人、こっそりと笑みを浮かべる。
体中、どこもかしこも愛された記憶が残っている、突然に襲ってきた幸福にまだ頭がついていかない気がする。 お風呂にというより、完全に泰隆に溺れそうになっている自分を自覚しながらも悠里は革張りで冷たいソファーへところり、と横になる。同じ轍は踏まない、何度も考えたのに、ついに手を取ってしまった先に何があるのか、今は何も考えたくなかった。 ただ。一つだけ、確かな事。 前よりも更に深く熱く自分が溺れてしまうだろう、ソレだけが悠里の頭の中にはあった。重い瞼を閉じて、どれだけ続くか分からない幸福の海に少しだけ浸りたいと思いながらも、闇に引き込まれていくのを感じていた。
続きは鋭意製作中という事でまた次回。ラブなんだかそうじゃないのか微妙な終わり方ですね;
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