「体調、平気か?」
教室に入ってすぐかけられた声に曖昧な笑みを浮かべ頷いた悠里は自分の席へと戻ると大きな溜息を零した。 異物は抜かれたけれど、そのあとの行為のおかげで体はだるく下半身は重い。
「おかえり〜具合悪くてトイレに篭ってたんだろ?・・・・・まだ、休んどけば良かったのに。」
隣りからの夏の言葉に今にも机に突っ伏しそうな顔を上げた悠里は瞬きを繰り返す。
「・・・・・誰が、それ・・・・・」
「先生だよ、永瀬先生。終了間際に戻って来て、保健室まで持たなかったって・・・・・違うのか?」
「・・・・・いや、先生に・・・・・迷惑かけた。」
呆然と呟く悠里に迷惑かけた事を気に止んだと思ったのか夏は「気にするなって」と軽く手を伸ばすと肩を叩いてくる。 内心巧い言い訳だと思いながらもどこから否定するべきなのか分からない悠里はやっぱり曖昧な笑みを浮かべた。 夏はそんな友人の様子に一瞬眉を顰めるけれど、すぐに本調子ではないのだろうと思い深く考える事もせずに話題を変えていた。 それがその後、『後悔』の最初のきっかけになるのだとその後気づいても、もちろん遅かったのだが。
増えていく、携帯の中、淫らで目を覆いたくなるほどの自分の淫乱な姿。 自分の顔だけ、痴態だけならまだ良い。 何をしているのか、どこを切り取ったのか鮮明に映し出された自分惨めな姿が増えていく。 消したくて堪らないのに、それでも無かった事にはできずに、悠里はどんどん深みに沈んでいく自分を実感していた。 逃げればどうなるのか分からない、それに何度も触れ合ううちに体は彼を拒んでなどいないのをまざまざと見せつけられている、そんな画をむやみに消すなんて事は出来なかった。 日々、追い詰められているそんな気がするのに、どこにもいけずに同じ毎日を繰り返す。 何も言わず無言の圧力を感じる泰隆の行動に意味が無いのか、有るのかすら分からず、ますます増える重い溜息を零しながら、今日も送られたメールに従い重い足を前へと進める。 ほとんど毎日の様に呼び出されるあの教室に。
*****
「新作はどうだった?巧く撮れていただろう?」
服の中へと手を差し込み、触れた突起を摘みながら耳元へと息を吹きかけ呟く泰隆に悠里はぶるり、と身を震わす。
「気にいらなかった?・・・・・なら、今度は角度を変えてみようか?」
無言の悠里に泰隆はそう言葉を続けると首筋へと唇を押し付ける。 ちりっ、と走る痛みと同時に強く吸われ悠里は縋るものを探すように泰隆の回された腕へと手を伸ばす。 絶えず浮かべている笑みさえ胡散臭く感じる泰隆に視線を少しだけ向け悠里はそのまま目を逸らすと唇を噛み締める。 素肌へと触れたままの手が撫でるようにゆっくり、と下半身へと伸ばされ悠里はその手を目で知らずに追っていた自分に気づき目をもきつく閉じる。視界がきかないと触れられるその感覚に肌が敏感になった気がしてすぐに目は開いたけれど、そんな悠里に泰隆は顔を近づけ唇を奪う。 半ば背後から抱きしめたままの唇に触れるには少し強引な体勢になったけれど、顎を掴みきつく閉じられた唇へと触れれば悠里は諦めた様にこめられた力を緩める。 強引に唇を割り忍び込ませる舌で口内を掻き回しながらも泰隆は下肢へと伸ばした手での愛撫も止める事は無かった。
「・・・・・んっ、っふ・・・・・あっ、っん・・・・・・」
零れ落ちる声を必死に噛み殺そうとする悠里に努力も虚しく背後から泰隆は性急に腰を進める。 最初は拒んでいる内壁を緩やかに突きながら掻き回すと、そこはいつのまにか泰隆を飲み込もうとする動きへと変わる。ぎちぎちと悠里の意思とは関係ナシに締め付ける内部の動きに元々存在を主張していたモノは更に大きく膨れ上がり、最奥をがんがんと突いてくる頃には濡れないはずの下肢から泰隆の先走りなのか、悠里自身のモノから零れたのか分からない液でぐちゅぐちゅと水音まで響かせる。 両足を惜しげも無く開き、抱え上げられたまま背後から深く、強く突かれ悠里は半ば泰隆に凭れたまま口を両手で押さえ込む。飲み込みきれない喘ぎ声が今にも零れそうなのだけは手で抑えられても濡れた音だけはどうする事もできずにいる。そんな悠里の心情を知っているのか気づいていないのか泰隆は更に大きく抜き差しをしてくる。 足にあたりかつかつと音を出す机、濡れた卑猥な水音、噛み殺しきれた声の変わりに漏れる荒い吐息、静かな部屋をその音だけが覆いつくす。 がんがんとより強く揺さぶられ、悠里はその度に増え続ける体内を渦巻く熱に頭の奥が白く霞む。 目の前が熱く、体内で吐き出された熱い奔流に耐えきれずに悠里自身も白濁の液を零していた。
「あーあ、どうするの床、こんなに汚して・・・・・」
耳元で呟く声に熱く潤んだ瞳を床に向けた悠里は呆然と目を見開く。 未だに熱を持ちたらたらと先から白く濁った液を零している自分のモノ、その更に下には白濁の溜まった床が目に映る。 それくらい広げられた両足の間には未だにまだ埋まっている泰隆自身の姿さえ目に映り、ぶるり、と身を奮わせる。
「・・・・・離して、拭く、から・・・・・・」
「拭く?・・・・・どうやって、ここに拭けるものなんて無いだろ?」
至極当たり前の問いかけにすら、腕の中もだえる悠里の耳には届かない。 泰隆は抱え上げたまま、まだ繋がったままの悠里の体から何も言わずに自身を抜こうと身を動かす。 ぐちゅり、と聞こえる音の後、ぴちゃ、と滴り落ちる音に悠里は身を縮める。 おかげで内壁さえもきつく窄まり泰隆は抜きかけた自身をまた奥へと戻した。
「ん、くっ・・・・・だ、め・・・・・・」
頭を振り拒み否定の声すら漏らす悠里をもう一度深く抱え直した泰隆は目の前にある耳へと舌を伸ばした。
「後にしろよ、片付けるより今はこっちが先。悠里のせいでまた力を取り戻したじゃん。」
首筋へも舌を伸ばし何度も唇を押し付けながら話す泰隆はゆっくり、と腰をも動かしだした。 ぎちぎちと更に締め付ける最奥をぐっと突き上げた泰隆はそのまま段々とスピードを上げて突きあげてきた。 濡れた床を眺めながら悠里は体の奥に熱を灯され快感という渦の中へと飲み込まれていった。
*****
ぐったり、と力を失くし机の上横たわる悠里から離れた泰隆は部屋を出て行く。 がちゃり、と閉まる扉に身支度をしないと、と当たり前の事を思いながらも体は気だるく、指ひとつ動かすのも億劫だった。誰が来るかも分からない教室、もしかすると今すぐ泰隆以外の人間が扉を開けるかも知れない、それなのに、体を動かすことすら出来ずに悠里は机に顔を押し付けたままでいた。 ひんやりと肌を擦る冷たい風が火照った体を冷ましてくれるようで悠里は自分の今の姿をやっと思い出す。 上半身の乱れは何とかなる、だけど下肢はズボンも下着も剥ぎ取られ、下半身裸のこんな姿誰にも見られたくない、だからこそ、あの脅迫メールに唯々諾々と従った自分に今更悠里は気づいた。 重い体を机に手をつき必死で起こしたその時、下肢からぐちゅり、と音がする。 加減も知らずに吐き出された泰隆の欲望を尻に力をいれ零れないように気をつけながら立ち上がった悠里はがらり、と開いたドアに思わず目を向ける。
「自力で起きれたんだ・・・・・悠里、零れてるよ・・・・・」
笑みを浮かべた泰隆がドアの前立っていた。 手に持つタオルに呆然と視線を向けた悠里へと呟く様に告げる泰隆はそのままタオルを投げてくる。 珍しい泰隆の態度に取り損ねたタオルが床の上へと落ちても悠里は立ち尽くしたまま泰隆を見上げる。
「何?」
「・・・・・・どう、したんですか?」
戸惑う言葉に泰隆は変わらない笑みを浮かべただけで、そのまま近づくと床に落ちたタオルをもう一度今度は悠里の手の中へと渡す。
「これ、身支度整えて。」
椅子へと座らせズボンと下着を手渡しながら告げる泰隆に悠里は顔を上げる。 何か言おうと口を開くけれど結局声にはならずに泰隆はタオルと一緒に持ってきた雑巾なのか?で床を掃除しはじめるから、悠里は後始末を済ませると身支度を整えだした。
居心地悪そうに椅子に座る悠里へと泰隆が目を向けたのはそれから、10分後の事。 何も言わずに不思議そうな顔で見上げる悠里に笑みを浮かべると泰隆は近寄ってくる。
「・・・・・・あの・・・・・」
「少し、話がしたいと思って、いいかな?」
伺う様に問いかけて来るからこくん、と頷いた悠里は泰隆を見上げ小首を傾げる。
「今更だから聞きそびれたままでいたんだけど、君は俺を嫌っている?」
何を今更言うのか分からない、そんな顔で眉を顰める悠里に泰隆はそれでも変わらない笑みを貼り付けた顔を一瞬崩し、内心溜息を吐くけれど幸いなのか不幸なのか悠里の目には映る事も無かった。
「・・・・・それが、何ですか?」
躊躇いながらも発した悠里の言葉に泰隆は「いや、いいんだ」と首を振り言葉を濁す。 いきなり黙りこみ一人考え込んだ泰隆に悠里は眉間に更に皺が増えるのを感じながらも長い沈黙に耐えきれずに大きく息を吸うと口を開いた。
「お話が無いなら、帰っても良いですか?・・・・・ここにいても意味はないみたいですし。」
「・・・・・ごめん、話ならあるんだ。だけど、どう言えばいいのか迷ってて・・・・・」
歯切れの悪い常に無い泰隆のその言葉に悠里はそっと溜息を吐いた。
「また今度、でよろしい、でしょうか?」
頑なに敬語を使い、この場を早く去りたいと言葉にも態度にも滲みだす悠里に泰隆は困った様な笑みを浮かべると渋々頷いた。
「また、今度。・・・・・それまでに纏めておくよ。」
椅子から立ち上がりドアへと向かう背中に投げられた言葉に悠里はただ頷くとドアを開き歩き出す。
再会してから一度も事後の後何も語ろうとしなかった泰隆の言おうとしていた言葉の想像が全くつかない。 そもそも何を言われるのか、想像がついていたら、自分は今こんな所にいないだろうと苦笑を浮かべる。 窓の外、部活をしている人の姿が見え悠里は窓の外にいる人達と自分の間にガラス一枚しか隔てるものは無いはずなのに線を引かれている気がして思わず頭を振る。 線が引かれているのは彼らと自分じゃなくて『教師』と『生徒』そんな線が引かれている泰隆と自分の方だと思う。 どんなに触れ合っても意味のない行為、気持ちどころか互いの考えている事さえ見えない現状。 抜け出したいともがけばもがくほど深みに嵌っていく自分を思い最近富に多くなった溜息を零した悠里はつい立ち止まっていた足をやっと踏み出し歩き出した。
恋愛は?すいません、突っ込みたくなるくらい進まない; かつてないほどの暗さを求めるあまりに甘さが足りないです。
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