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「・・・俺の話、ちゃんと・・・聞いてくれない・・?」
髪を掻きあげると溜息を漏らす恭司を彼方は幹に縋りついたまま少しだけ顔を向ける。
「指定しといて、アレだけど・・・本当に連絡も取れなかったんだよ。携帯は自宅だし、番号は知ってたけど・・・彼方は非通知は拒否してるじゃん、だから・・・」
「・・・本当に急用?」
「・・実家に帰ってた・・・バーちゃん、具合悪くて・・・これは本当だし、電話も一応してみたけど・・・・非通知、拒否してるだろ?」
問いかけにただ頷いたまま彼方は呆然と恭司を見る。 その視線に気づいていながらも恭司は何も言わずに先を続ける為に口を開いた。
「だから、すっぽかしたんじゃなくて、居なかったんだよ。ここに・・これは理解してくれた?」
ただ頷く彼方に恭司は溜息を零すと笑みを浮かべる。
「・・・花火大会の前に別れ話を持ち出したら・・・アレだけはどうしても一緒に行きたいって言われた。・・・まさか、あそこで会うとは思わなかった。」
「仲、良さそうだったし、やっぱり・・・羽生には・・」
「俺は、彼方が良いんだけど、それでも・・・やっぱり、俺は夏だけの相手?・・・夏が終わったら用なし?」
あの夜の二人を思い浮かべ言う彼方の言葉を遮り恭司は真っ直ぐ彼方を見つめたまま言葉を繋ぐ。 呆然と恭司を見たままの彼方は瞬きを繰り返す。
「・・・彼方?」
「俺、男だし・・・胸も、体も堅いよ・・・」
「・・・知ってる・・・それでも、俺は彼方が良いんだけど・・・それじゃ、ダメ?」 言いながら身を乗り出してくる恭司に彼方は頭を項垂れる。 手を伸ばしそっと抱き寄せる恭司の胸に頭を摺り寄せた彼方はそっと背へと手を絡めてくる。
「好き、だよ・・・彼方に今は結構メロメロなんだけど、俺・・」
胸元にある頭に顔を摺り寄せると呟く恭司にびくり、と身を奮わせる彼方は背へと伸ばした手に少しだけ力を込める。
*****
「・・・ねぇ・・・キスして・・」
暫く硬く抱き合ったままの二人の間に纏う甘い空気に酔いしれていた彼方へと囁くように恭司が耳元へと呟いてくる。 少しだけ身を離すと彼方はそっと顔を上げそろそろと恭司の唇へと自分のソレを触れ合わせた。
「・・・もっと・・・?」
躊躇いながら問いかける彼方の息がかかったのか、少しだけ身じろぐ恭司の首筋へと腕を回し彼方は唇を何度も触れ合わせる。 いつのまに腰へと手を回していたのか恭司は少しだけ離れていた彼方の腰を引き寄せると深く唇を押し付けてきた。 少しだけ開きかけた唇を舌で押し開き恭司は舌を絡めてくる。 入り込み、絡みつく舌に翻弄され口の中に溢れる唾液が飲み込みきれなくて唇の外へとたらり、と零れ落ちても恭司はキスを止めようとしなかった。
「・・・っあ・・羽生・・」
「ダメ?・・・今すぐ欲しいんだけど・・恥ずかしいんだけど・・・キスで欲情、しました。」
唇を離し零れた唾液を掬うと彼方の手を取り自身の下半身へと導くと、居心地悪そうな顔で恭司は呟く。 反応している膨らみに顔を赤く染めたまま彼方は恭司を見上げる。
「・・・もう少し、もたない?」
「無理!・・ねぇ、しよう・・・」
伺うように顔を覗き込む恭司にますます顔を赤く染めた彼方はゆっくり、と頷く。 その反応に笑みを浮かべると恭司は彼方へと先ほどと同じ深いキスを送りながら体へと手を伸ばしてくる。 シャツの中に手を入れ最初から素肌へと触れてくる恭司に彼方も彼のTシャツをめくり、素の背中へと手を伸ばす。 少しだけ木から離され草むらに脱いだシャツを引いて彼方は横にされる。 目の前で微笑みかけてくる恭司へと手を伸ばすと抱きしめられ深いキスを送られる。
夕暮れだったのがすっかり見上げる空がとっくに夜空へと変わり、細かな風で木々を揺らす葉の音に混じり、くちゅくちゅと鳴る濡れた音に彼方は唇へと手を押し付ける。
「・・・彼方、声・・平気だから・・・」
必死に両手で口を塞ぐ彼方に苦笑すると、少しだけ身を起こし耳元へと囁く恭司に頑なに彼方は顔を赤く染めたまま頭を振る。
「・・・キス、したいから・・・外して・・・」
手の甲を舐めながら笑みを浮かべ言うと彼方は諦めた様にそろそろと手を離す。 足を開いて体の真ん中に男を受け入れているこんな姿誰にも気づかれたくない、とそれでも唇を噛み締める彼方へと恭司は何度も軽くキスをする。
「・・・んんっ・・」
「好き、だよ・・・彼方・・愛してる・・」
キスしながら何度も囁く恭司に彼方は目元を潤ませる。 透明な液体が流れ出した彼方の目元へと恭司はキスするとソレを舌で舐め捕りながら、放置したままの下半身へともう一度手を伸ばしだした。 ゆっくり、と入り込んでくる異物に唇を噛み締める彼方にキスを繰り返しながら恭司は奥へと突き進んでくる。 ぎちぎちときつく閉まる内に眉を顰めるとそっと息を吐く恭司に彼方はそっと瞳を開く。 目元が潤み視界が少しだけぼやけるから瞬きを繰り返すと恭司へと顔を向ける。
「・・・へ・・いき?」
視線に気づき少しだけ笑みを浮かべる恭司に彼方はこくり、と頷く。 耳元でかさかさと身動ぎするたびに動く草の音にここが外だと改めて気づかされ一人顔を赤く染める彼方に恭司は少しだけ身を寄せるとキスをしてくる。
「・・・んんっ・・・」
奥の異物の向きが変わり眉を顰める彼方へと身を寄せたまま恭司はキスを繰り返すとゆっくり、と動き始める。
「・・・きょう、じ・・・」
「ごめん・・・もう、無理・・・」
腕を掴む手に力を込めてくる彼方の耳元で少しだけ荒い呼吸の元呟きながらも恭司は動きを止めないから彼方は油断すると飛び出そうな喘ぎを唇を噛み締め堪える。
*****
「彼方・・・声、出してよ・・誰も、聞かないよ・・・」
耳元に呟いてくる恭司にふるふると頭を振り、唇をぎゅっと噛み締める彼方に彼はそっと溜息を零す。 汗で滑る素足を抱え上げたまま、深く繋がる恭司の腕を握り締める手も噛み閉める唇も色を無くしていて恭司は彼方へとキスを送る。
「・・・んっ、あっ・・だめ・・・」
「ダメじゃない。・・・聞かせてよ・・ちゃんと、俺で感じてるって、証明して・・」
キスを繰り返しながら唇をこじ開ける恭司に頭を振ると拒む彼方の耳元へとそっと囁く。 奥へと突き入れると、ナカで動かすたびに漏れてくる濡れた音に耳まで赤く染めたまま彼方は恭司の背へと腕を伸ばし彼を引き寄せる。
「・・・っふ・・彼方・・」
「きょ・・・じ・・・ああっ・・・ダメ・・・ナカ・・・」
彼方が声を漏らすたびにナカが蠢いて恭司は息を零す。 舌を絡めるキスを仕掛ける恭司に必死に喰らいついてくる彼方を抱きしめ直すと恭司は勢いをつけて動き出す。 ぐんと深く突かれ彼方は身を奮わせるけれど、もう躊躇いも迷いも振り切ったのか恭司は行為を止めなくて、どうしても乱れる呼吸を必死に整えると彼方は薄っすらと笑みを浮かべ恭司へと抱きつく。
「・・・彼方っ・・」
「・・っん、きょう、じ・・」
汗やその他の体液で濡れた肌は重なる度に湿った音を辺りに撒き散らす。 必死で声を抑えながらも舌を絡め取られるキスをしながら進んでくる恭司に彼方は飲みきれない唾液を零し息を乱し喘ぐ。 ぐちゅぐちゅ、とありえない場所から響く濡れた音も深く飲み込んでる奥からも前からも零れ落ちる汗や精液で濡れていて背へと回す手さえも汗で滑る。 張り付く髪を振り乱し彼方は恭司へと必死で抱きつき奥で質量を増やす恭司自身にも限界が近いのを何となく感じる。
「・・・ああっ・・っ、んふっ・・・」
奥へと溢れ流れる液に喘ぐ彼方の口を恭司は深く塞ぐと何度か身震いすると同時に彼方も恭司に扱かれ掌へと欲望を吐き出す。 キスを繰り返しながら息を少しづつ整えた二人は暫くその場へと身を横たえ互いの温もりを確かめあっていた。
「・・・怒ってる?」
「・・何で、別に怒ってないよ。・・・それに、頷いたのは俺だし・・」
トイレで鏡に向かい必死に自分を確かめている彼方を後方で立ち尽くしたまま眺める恭司の問いかけに苦笑で答える。
「本当に、あそこまでやるな、とか・・・思ってない?」
気づいた背中の汚れを払いながら眉を顰め問いかける恭司に彼方は耐え切れずに笑い出した。
「・・・彼方?」
「平気、だよ・・・でも、もう・・外は嫌です。」
後ろを振り向き顔を近づけ耳元へと呟く彼方に恭司は安堵の溜息を漏らすと頷く。
「そうだ・・・俺、お願いがあるんだけど・・・」
「恭司?」
手を引きトイレから出ると外灯でほんのりと明るいベンチへと彼方の手を引き座らせると恭司は目の前へと座りこんだ。 鞄を探り目当ての物を見つけたのか嬉しそうに取り出したソレに彼方は瞬きを繰り返す。
「花火、やりたくてさ・・ごめん、これしかもう無かった。」
肩を落とし呟く恭司の手にある花火へと手を伸ばした彼方は笑みを深くする。
「俺、これで良い。・・・好きだよ、花火の中でこれが一番。」
見上げる恭司の顔が驚きから笑顔へと変わるのを彼方は笑み浮かべたまま見つめる。
パッと勢いよく燃えて色とりどりの華やかな大輪の花を咲かすと消えていくまるで夏を象徴する花火より静かにひっそりとでも辛抱強く燃えているそんな花火の様な恋ができたら良い。 消えそうで消えないちりちり、と燃えている線香花火を見ながら肌を撫でる風の冷たさに彼方は顔を上げる。 早々にぼてり、と火の玉を落としぼんやり、と彼方の手元を見つめていた恭司が顔を上げて二人の視線が絡みあった。 自然に笑みを浮かべた二人はそっとキスをする。 ほのかな明かりと月だけがぼんやりと重なり合う二人を眺めていた。
夏がもう終わりを告げていたそんな夜だった。
お読み頂きありがとうございました。 20070823
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