君のいる風景

<愛の唄 番外編>

「年末年始はきっと実家にいると思うから。」
そう愛しい恋人に呟かれたのは年越しも間近に迫ったクリスマスの夜だった。
できれば年越しの除夜の鐘も年を越して一番最初にその顔を見れればいいな、と思っていた識は不満をその顔いっぱいに広げる。
「何で?・・・・・普段はほとんど実家に寄りつかないだろ!」
「・・・・・それは仕事忙しいし、でも、年末年始ぐらいは帰らないと、親うるさいし。」
淡々と返す肇に識は一人熱く年末年始の二人を妄想していた自分が虚しくなりながらも、とりあえず誘ってはみた。
「ちらり、と顔出すだけでいいじゃん!・・・・・どうせ、姪とか甥にお年玉せがまれるなら俺といようよ、ねっ?」
「・・・・・でも、こんな時しか実家に帰れないだろ?」
「大丈夫、お盆もあるじゃん!・・・俺が一人寂しいのは肇だって嫌だろ?」
甘えモード全開で訴える識に肇は困った顔で微笑む。
「電話はするから、真っ先に声を聞かせて。」
そんな言葉を返し肇は会社が休みになったその日の夜に実家へと旅立った。
「愛が薄いよな、あいつ・・・・・」
年末年始だから、ほとんど特番で埋められているテレビのチャンネルをぱっぱっと変えながら識はぽつり、と呟いた。
一人の部屋の中その独り言はやけに響いて項垂れると大きな溜息を零した識は何もする気が起きないままずるずるとソファーへと這い上がりぐったり、と横になる。

ピンポーン。
ピンポーン、ピンポーン
間を置かずに立て続けに鳴らされるチャイムの音でうとうとしかけていた識は跳び起きるといきなり起きあがったおかげでふらつく頭を抑えながら玄関へと向かう。
その間も鳴り止まないチャイムの音に眉を顰めながらドアを開ける。
「イタッ!」
ごつんと勢いよくぶつかる音と微かな呻き声に肇はドアの外へと目を向けた。
「すいません、そんな近くに立って・・・・・・・って、肇?」
「・・・・・ドア開けるときは誰か確かめようよ、痛いな〜」
「何で、帰ったんじゃなかったのか?」
ぶつぶつ頭を擦りながら呟く肇を上から下まで視線を流しながら呆然と識は呟く。
「帰ったよ。・・・・・でも、識、一人なのは僕も寂しいな〜と思って。・・・・・・迷惑だった?」
上目遣いに見上げ笑みを浮かべる肇に識はぶんぶんと頭を振ると肇の腕を引き抱き寄せた。
「・・・・・ちょっ・・・・・ここ、玄かっん・・・・・・・!!」
抱き寄せる識に慌てて抗議の言葉を吐き出す肇の口を強引に塞ぐためにキスをする。
何度も繰り返すそのキスを終え微かに零した熱の篭った肇の吐息に識はそのまま彼を強引に寝室へと連れて行く。

*****

「・・・・・識、ちょ・・・・・・待って、・・・し、っん、んんっ!」
ベッドへと投げ出されまだコートだよ、と目で訴える肇の服をほとんど毟り取る様に脱がせながら識は何度もキスを繰り返す。舌を絡め吐息をも奪いつくす様なキスを何度も繰り返しながら手早く服を脱がせ、暴き出した肌へもキスの雨を降らせる。ほんの数日会わなかっただけなのに、飢えた獣の様な識に肇はそっと溜息を零すとその背へと手を回した。
そんな強引な識を肇だって嫌いじゃない、自分に会えなくて本当に寂しかったんだと感じてむしろ嬉しいぐらいだった。
だから、念入りというよりも強引におざなりに解した場所にずるずると埋め込んでから後悔する識に肇はこみあげてくる笑いを止められなかった。
「ごめん、強引すぎたか?」
ぴりぴりというよりびりびり感が強い痛みに顔を顰める肇に識はすまなそうに謝ってくる。
「・・・・・平気、だから・・・・・動いて、もういいから。」
体内で熱く脈打つモノの鼓動を感じながら微かに笑みを浮かべる肇に識はそっとその唇へとキスをするとゆっくり、と腰を動かしだした。
「・・・・・っく、肇、大好きだよ・・・・・」
耳元で囁きキスを送りながらも識は腰をゆっくりといつもよりも更に慎重に動かし始めた。
いつもなら絡みついてくるしっとりとした内壁は動かすたびに異物を押し出すように硬く閉じる。
萎んだままの肇のモノに手を伸ばし腰を動かすたびにそれも擦りだすとやっと少しづつ上向いてくる肇のモノに合わせて締め付けていた内壁もゆっくりと綻んでくる。
自分の先走りの潤いも借りやっといつもよりも少し固い蕾の中、最奥を何度も突き上げる識に合わせる様に手の中の肇も勢いを取り戻してくる。
「・・・・・ああっ・・・・・識、そこ・・・・・んあっ・・・・・・」
同時にただ痛みしか感じられなかっただろう肇の声にも甘さが混じってきて識は笑みを浮かべると少しづつ挿入の位置を変えながらも動きを早めていく。
「・・・・・は、じめ・・・肇、一緒に!」
切羽詰まった擦れた声にこくこくと頷き肇は必死に識の首筋へと回した腕に力を込め縋りつく。
足を大きく広げ腹にも届きそうな程曲げられ、がんがんと奥を突かれだらだらと溢れだす先走りを零しながら、肇はびくびくと体を震わせる。最奥に熱く激しい飛沫が叩きつけられ、唇を噛み締めると肇は自身の欲望をも弾けさせながら、識へと更に強く縋りついた。

「はぁー・・・・・気持ちいい。」
浴槽へと浸かり縁へと顔を乗せた肇の呟きに識は肇を引き寄せると彼をぎゅっと抱きしめる。
「・・・・・・ごめん、本当に、ごめん・・・・・・」
首筋へとキスをしながら背後からそっと呟く声に肇は顔を少しだけ識の方へと向けると笑みを浮かべる。
「嬉しかったよ、何か恋焦がれてる感じで・・・・・」
「・・・・・それは口に出すなよ、俺、恥ずかしいじゃんか。」
ぐりぐりと顔を首筋へと押し付けながら呟く識に肇はしっかりと自分を抱きしめている腕へと手を伸ばした。
「実家に帰ったら識に会えなくて寂しくなった。・・・・・僕も識に会いたくて堪らなかった。会社が始まれば会えるのに、今すぐ会いたくて堪らなかった。」
小さな声でそっとぽつぽつと呟きながら、肇は識の手へと自分の手を重ねてくる。
その手を重ねると識は肇へとなるべく顔を近づけキスをしてくる。
そっと触れ合う度感じる熱に重ね合わせた手にどちらからともなく力を込めると二人は長い事キスへと没頭する。

*****

ゴーン、ゴーン。
テレビで鳴り響く鐘の音に混じり、部屋の外からも聞こえてくる鐘の音に二人は顔を見合わせると笑みを浮かべる。
カウントダウンがテレビの中で始まり互いの手を握り締める。
「明けましておめでとう、今年もよろしく。」
「・・・・こちらこそ、今年もよろしく。」
お決まりの言葉を語り合うとどちらからともなく顔を近づけるとそっと触れ合うだけのキスをする。
「年越しそばとか食べとく?」
「いらない、それより・・・・・もっと・・・・・」
軽いキスだけじゃ物足りなかったのか縋る様見つめてくる瞳に識は笑みを浮かべると唇が触れ合うだけのキスを何度も送る。それはその内互いに伸ばした舌を絡め合い深く濃厚なキスへと変わっていく。
そして二人はまたもやベッドへと深く沈みこんだ。

ぱちん、とリモコンで消されたテレビの音が消えた部屋には、ただ濃厚な情事の音だけが響き渡る。


「愛の唄」の二人は山も谷もなくただひたすらラブかと思われます。
そんな二人のお正月でした。 20080104up

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