午前0時。
鐘の音と共に朋哉の恋は幕を閉じる。
あっけない幕切れに涙すら出てこないままふらふらと朋哉は自宅へと向かう。
始めは普通の恋人同士だったはずがいつの頃からか相手の機嫌を損ねない様気を使い会えばぐったり、と疲れその頃から朋哉自身でさえこれが付き合う事なのか疑問すら涌き始めていた。
そんな時噂が届いた。それは彼が見合いをしたという噂だった。
潮時だとか良い機会としか思えない自分が笑えてそして泣きたくなった。
噂を彼の口から聞きたくて呼び出した今夜。
-----彼は来なかった。
歩きながら朋哉は元彼となった彼の携帯のアドレスをを消す。
携帯の様に彼の記憶も思い出すらも消してしまえたら良いのにとぼんやりと思う。
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「柚月〜本決まりらしいぜ。…あの噂」
「あの噂って?」
朝一で同期入社の加藤が興奮して語るのに朋哉は「・・・あぁお見合いの事か」と今思い出したかの用に頷き先を促す。
「そう。先方が乗り気らしくて・・・いいよな〜。営業は出会いがあって。」
「開発は無理かな?」
「無理だろ。せいぜい社内結婚位じゃね〜の。」
羨ましそうにぼやく加藤に朋哉は苦笑する。
-----件の噂の彼が朋哉の付き合ってた男だった。
彼…有坂奏は同期入社の中では一番の有望株と当時から噂され営業部のホープと名高い男でもあった。
そんな男と付き合っていたなんて今は信じられなかった。
告白すら有耶無耶だったのを思いだし朋哉は散々振り回された結果がこれかと少し呆れた。
今更だ、と気持ちを切り換えると加藤と別れたまった仕事へと取り掛かる。
会社では単なる同期入社の顔見知り程度でいた奏が朋哉を訪ねて来たのはその日の昼休みだった。
「今、良いかな?」
「何ですか?・・・これからお昼なんですけど。」
「お昼?・・・一緒しよう。話したい事あるし。」
伺う様にしてるのに有無を問わず一方的に決めると奏は歩き出す。
気付かれないほど微かな溜め息を漏らすと朋哉は後をゆっくりと付いて行く。
会社の近くのファミレスに落ち着き二人、適当に昼食を頼んでから沈黙が続く。
朋哉は何を話したら良いのか分からず手元のメニューを除き奏は胸元から煙草を取り出し吸い始めた。
「話あるんだろう?・・・何?」
「・・・飯食いながらで。」
「見合いの話なら知ってるよ。・・・おめでとう。本決まりだそうで。逆玉?やるじゃん。」
「・・・まだ決まってない。」
沈黙に耐えきれず話しかけるが奏は無愛想に返すだけで話は続かない。
頼んだ食事が来てもごはんを食べてるから、の沈黙に耐えきれずまた朋哉は口を開く。
「でも良い話だよね。出世街道まっしぐらだしさすが一番の有望株だね。」
「お前はそれで良いのか?」
「何か言いたい事でも?僕には関係ないよ。有坂が結婚しても困らないし。話ってそれ?・・・ならもう行くよ。ごゆっくり。」
和やかに話しかけたはずなのに別の言葉を言わせたい様な含みを持つ答えに朋哉は立ち上がると財布から札を取り出しテーブルへと置く。
「置いていくなよ。」
「・・・話は終わりだろ?僕急ぎの仕事があるから早く戻りたいんだけど・・・。」
「まだ終わってないから・・・勝手に終わらすなよ。」
また席に座り直すのを確認して奏は食事の終わった食器を脇へとどかす。
「話したいのは朋哉だったんじゃないのかよ。・・・メールに気づいたの遅かったんだよ。だから当然行けなくてその事謝りたくて、後、話って何なのか聞こうと思ってた。」
「・・・何で今頃?」
「鞄に携帯入れたままだった。・・・接待で、帰りも遅くて・・・」
「いいよ、もう。」
珍しい程に言い訳する奏に朋哉は微かに笑みを浮かべる。。
「・・・見合いの話なら断るよ。今はその気もないし、俺にはおまえがいる。」
「受ければ。・・・僕はあんたに振り回されるのはもう嫌なんだよ。もう終わりにしたいんだ。・・・そういう事なんで、さようなら。」
「待てよ!どういう意味だよそれ!」
立ち去ろうとする朋哉の腕をとっさに掴み問いかける奏に淡々と返す。
「言葉通りだよ。さようなら、有坂!」
掴まれた腕を振り放すと朋哉は呆然と彼を見る奏から顔を逸らすと店の出口へと向かう。
会社へと戻る道を歩きながら朋哉は独り乾いた笑みを漏らす。
自分の中で終わらせた恋を少しでも大事だと奏が思ってくれていたのなら抱いた思いが少しでも報われる気がしたから。
実際は受けたくない見合いを断る口実にしたかったのかもしれないが。
仕事場に戻ると朋哉は気持ちを切り替えるかの様にひたすら仕事に打ち込みはじめた。
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電車に揺られている間眠くて仕方なくて部屋が近くなると朋哉は少し歩く速度を速める。
階段を上がって部屋の前の人影に朋哉は驚いたまま立ち尽くす。
「お帰り。今日は遅いんだな。」
「・・・何?話はもうないよ。」
昼間別れを告げたはずの奏が昼間の話が無かったような軽い感じで手を上げ迎えてくる。
どうして居るのかわからずに戸惑いながら答える朋哉の声は微かに震える。
「怯えるなよ。・・・昼間のあれじゃなんだから、ちゃんと話がしたかったんだ。」
「・・・話す事は僕にはもう無い。」
「俺にはある。・・・ねぇ、終わりにするって何?俺が見合いをしたから?俺に飽きたから?・・・理由教えろよ。俺が納得できる理由を。」
後ずさる朋哉の腕を掴み引き寄せると奏は矢継ぎ早に問いかけてくる。
「あんたが納得できる理由なんてないよ。ただ別れたいだけ・・・それだけだよ。」
「なんだよ、それ。何かあるだろ・・・言えよ!」
「・・・もう、嫌なんだよ!・・・あんたに合わせるのも疲れたんだよ!」
何か、なんて朋哉にはわからなかった。
だからそのままの心情を語る朋哉に奏は彼を抱きしめる。
「・・・っ!何、考えてるんだよ。離せよ!」
「離せば二度と触れない気がする。・・・俺は嫌だよ。おまえと別れたくない。」
「勝手なことを・・・すぐ、忘れるよ・・・」
朋哉の抵抗をものともしない奏に意地になり離れようとする。
「・・・朋哉!」
「離せよ。僕はもう嫌だ。・・・見合いの話聞いたとき潮時だと思ったよ。別れるきっかけが出来たと・・・。だから、離せよ。」
「俺とはもう付き合えない?」
「・・・無理だよ。」
力を緩めた隙に朋哉は奏の腕の中から抜け出す。
そして彼が立ち尽くしたままなのが気になりそっと伺う。
「・・・奏?」
「・・・・好きなんだ。どうしたら忘れられる?」
呟く奏に朋哉は何も言えずに彼を見る。
ここで手を差し出したら戻れない気がするのに分かっていたのに差し出すことしか出来なくて朋哉は奏を抱きしめる。
「・・・同情?哀れみ?・・・惨めな俺が可哀想になった・・・」
「奏。」
「それでも良いよ。・・・離れないでいてくれるなら・・・」
抱きしめ返す奏に朋哉は彼の胸元へと顔を押し付ける。
どこへ向かうのかも今でも奏を好きでいるのかも朋哉には分からなかった。
「朋哉」
顔を上げさせキスをしてくる奏に朋哉は瞳を閉じる。
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部屋に入ると同時に唇を奪う様なキスをしてくる奏に朋哉はただ従順に答える。
床に倒され少し強引に服を剥ぎ取られ朋哉は微かに抵抗するが当然奏は気づかなかったかの様に事を進める。
「・・・っ、待って・・・奏!」
床で始めるのにどうしても抵抗がある朋哉は奏へと声をかけてみる。
聞いてないのか無視されてるのか無反応で先へと進む奏に朋哉は唇を噛み締める。
衝撃は一瞬だってわかってても激痛は体中を巡る。
堅く張り詰めた肉が体内に入る瞬間は何度経験しても慣れることは無く朋哉は噛み締めた口元に手を当てる。
いつもより強引に事を進めた奏は朋哉の様子を確認もせず腰を動かし始める。
「・・・っあ・・・ん・・・」
少し乱暴に中を掻き回す奏に抑えられない声が漏れる。
慣れてる行為なだけに痛みを必死に回避しようとする朋哉の努力も奏は見ていなくてただ強引に腰を動かし自分の快楽だけを追い求めてる気がする。
「・・・奏・・・もっと、ゆっくり・・・」
腕へと爪をたて必死に抗議する微かな声に正気に戻るかの様に朋哉と目が合い奏は動きを止め彼の頬へと手を伸ばす。
「・・・ごめん。俺・・・」
「いいから、続けて。・・・僕を見て・・・」
体を離そうとする奏に抱きつく朋哉を抱きしめ緩やかに行為を再開する。
「好きだよ、朋哉」
キスをしながら愛を囁く奏に鼻の奥がつんとする。
突き上げる痛みは快感を拾い出し朋哉は奏にしがみつき甘い吐息を漏らす。
「あんっ・・・あ、もう・・・」
「・・・俺も、イキそう・・・」
抜き差しが早くなり、体の中に熱いものがまかれ朋哉もまた重なる二人の間にある自身を解放する。
床での後バスルーム、ベッドと場所を移しいい加減今日は無理な所迄来て二人ただベッドへと横たわり奏は煙草を吸い出しじっと壁を見つめている。
「・・・奏?」
「・・・あのさ、俺たち、ちゃんと話をしよう。」
「なんで、今更。」
「・・・我慢してるなら教えてよ。ちゃんと直すし、言葉も足りないと思う。」
いつになく真剣に語る奏に朋哉は顔を上げる。
「俺さ、かなり束縛する方だと・・・朋哉と付き合って気づいたんだけどそれがしんどいならちゃんと教えてよ。・・・できれば、長く付き合いたいから・・・」
予想しない言葉に朋哉は胸の奥が熱くなる気がして唇を噛み締める。
「・・・見合いも断ったよ。その気が無いのにずるずるしたくないし。ねぇ、信じる?俺・・・お前に一目惚れしてるって。」
「嘘・・・だよね?」
沈黙したままの奏に朋哉は呆然とそれが肯定だと気づく。
「・・・奏!好きだよ」
「・・・おまえ・・・好きじゃないって言ってなかったか?」
「忘れて!」
「・・・・・っ!・・・げんきんなヤツ・・・」
抱きつく朋哉に奏は苦笑すると抱きしめてくる。
「当分言わないから覚えとけよ。・・・・・愛してるよ、朋哉。」
好きだとは言ってくれるけど愛の告白は初めてで朋哉は抱きついたまま顔も上げれない。
素肌に落ちてくる生温い液体に奏は朋哉をただ撫でる。
幕が閉じたと思った夜が嘘みたいなその夜。
朋哉は愛しいと改めて思いなおされた恋人の腕の中で温もりに包まれ眠りへとついた。
頑張ってみましたが・・・微妙ですね。次回はもう少し精進します。 2007/02/06
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